『シャーロック・ホームズの凱旋』あらすじとネタバレ感想!あの名作が森見登美彦の手によって魔改造される
「天から与えられた才能はどこへ消えた?」
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?—–
この手記は脱出不可能の迷宮と化した舞台裏からの報告書である。
いつの間にか迷いこんだその舞台裏において、私たちはかつて経験したことのない「非探偵小説的な冒険」を強いられることになったわけだが、世の人々がその冒険について知ることはなかった。スランプに陥ってからというもの、シャーロック・ホームズは世間的には死んだも同然であり、それはこの私、ジョン・H・ワトソンにしても同様だったからである。
シャーロック・ホームズの沈黙は、ジョン・H・ワトソンの沈黙でもあった。
—–(本文より)謎が謎を呼ぶ痛快無比な森見劇場、ついに開幕!
Amazon内容紹介より
シャーロック・ホームズと森見登美彦さんが邂逅する時、そこに何が生まれるのか。
ワクワクしながら読み進めると、これは僕が知るアガサ・クリスティーのシャーロック・ホームズではなく、森見登美彦さんのシャーロック・ホームズでした。
この世界を塗り替えてしまう力はさすがの一言です。
本書に関する森見さんへのインタビューはこちら。
「苦しんでいた」森見登美彦さん、7年以上かけた新作の主人公は名探偵・ホームズ…「シャーロック・ホームズの凱旋」
この記事では、本書のあらすじや個人的な感想などを書いています。
核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。
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あらすじ
スランプ
私ことワトソンの視点で語られます。
物語の舞台は京都。
シャーロック・ホームズの名前は名探偵として轟いていて、彼の活躍を小説としてワトソンが仕立てるとこれが大ヒット。
ワトソンは診療所も開業して、妻のメアリとも仲睦まじく、人生バラ色そのもの。
しかし、そこで思いがけない転機が訪れます。
ホームズが突然のスランプに陥ったのです。
見えない解決の糸口
ワトソンはホームズのことを気にかけますが、肝心のホームズはスランプから脱する気力すら失っていました。
メアリからすれば今やホームズは夫の疫病神であり、良い顔はしません。
ワトソンはこれからの生活のためにもホームズにはスランプから脱してもらわないといけません。
しかし、ホームズは来ている依頼もくだらないと一蹴し、解決の糸口すら見えません。
さらに問題は、そんなホームズをワトソンが見捨てられないことでした。
もう一人の天才
ここでかの有名なジェイムズ・モリアーティの名前があがります。
ここでの彼は応用物理化学の教授として有名でしたが、ある日突然、大学の研究所をやめてしまいました。
自分の研究に集中したいことが理由で、今やホームズと同じ下宿先で暮らしています。
原作とは違う形で二人は交わり、やがて大きな未解決事件に立ち向かうことになります。
感想
これぞ森見ワールド
個人的に世界観という言葉があまり好きではありません。
もっと言葉を尽くしてその世界観を作り上げる要素など説明すべきなのですが、森見さんについてはつい世界観という安直な言葉を使ってしまいます。
それは他に適切な言葉が見当たらず、説明しようとするとその雰囲気を壊してしまう気がするからです。
なので、恥を忍んで世界観という言葉を使わせていただくので、森見さんの作品を知る人に伝われば嬉しい。
本書はシャーロック・ホームズというミステリ界隈において知らない人がいないほどの名作を下敷きにしつつも、作品の内容は別作品と呼んでも差し支えないほど変わっています。
そしてすぐに違和感がなくなるのですが、それは森見さんのリーダービリティの高い文章のおかげであり、自分の世界を作り出すことが異様に上手い証拠だと思っています。
こんなホームズ見たくない
本書に登場するホームズは見ていられません。
スランプに陥り、彼のことを心配する人に斜に構えた態度をとり、好意を無下にするどうしようもない男。
タイトルにある凱旋なんて、まったく想像できないほどのダメ人間っぷりです。
メアリはホームズのことを毛嫌いしていますが、それも仕方ないと思えるほどです。
ホームズがなぜこのようなキャラクター設定になっているのか。
それにはちゃんと理由があるのですが、知るまでにある程度読み進めなければならないので、読者はまずそれを念頭に置く必要があります。
後半の追い上げ
色々な人が言及していますが、中盤まではけっこう退屈です。
ホームズとワトソンのやり取りは平行線で、モリアーティが登場しても状況が悪化するばかり。
冗長で退屈で、読んでいることがだんだんしんどくなってきます。
しかし、それはホームズのスランプと向き合う上で必要な時間で、ちゃんと本書がホームズとワトソンの物語であることが中盤以降で明らかになります。
そこからは超特急で物語が加速します。
今までと同じ文体なのに、読者の読むスピードはきっと倍以上に加速するのではないでしょうか。
そして訪れた真実に驚き、声が出せないほど打ちのめされます。
ここまで意表を突かれ、読んで良かったという納得感があったのは本当に久しぶりでした。
記憶を消して再読した系の作品ですね。
おわりに
途中で飽きたと思っても、どうか騙されたと思って最後まで読み進めてみてください。
そうすればシャーロック・ホームズを森見さんが手掛ける理由が見えてくるし、評価が高い理由も見えてきます。
個人的には森見作品の中でも上位にくるほど面白かったです。
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