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『恋は雨上がりのように 10巻』最終巻のあらすじから結末まで!ネタバレ感想!

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橘あきら17歳。高校2年生。 ガーデンで過ごした大晦日から 年が明け大雪の元旦。 部屋で一人黙々とペンを走らせる店長。 編み上げたマフラーを下げ あきらは傘をさし、家を発つ。

「きっと、すぐやみますよ。」
あの出会いの日から季節はめぐり、 二人が雨上がりの空に描くのは―――

『恋は雨上がりのように』 ついに完結――!

【編集担当からのおすすめ情報】
『このマンガすごい!』『マンガ大賞』『全国書店員が選んだおすすめコミック』
各賞にランクイン、アニメ化・実写化と最注目の、青春と恋の物語です。

Amazon商品説明より

ついに最終巻を迎えてしまいました。

前の話はこちら。

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結末について、賛否両論が巻き起こったようですが、僕はとても納得のいく気持ちの良い結末だと思いました。

本人でさえ目をそらしている、本当に大切なもの。

それに気が付いた時、雨上がりの空ようにすっきりとした表情で未来を見据えるみんなの姿がとても眩しかったです。

この記事では、最終巻の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

第74話

正月、大雪の中、自宅で執筆に没頭する店長。

あまりの雪に昼飯を買いに行くことを断念し、まずはとお風呂に向かいます。

そこに運悪く到着してしまったあきら。

インターホンを鳴らしますが、お風呂場の店長は鳴ったかな?くらいの反応で、無視してしまいます。

待っても出てこない店長に、あきらはそのまま帰ってしまいます。

店長は何事もないようにお昼ご飯を食べ、食後の一服。

ふと気になって携帯を見ると、そこにはあきらがこれからアパートに行きたいという内容のメールが来ていて、ようやくさっきのインターホンがあきらのものだったと気が付き、慌てて外に出ます。

すると、ドアノブにはあきらが掛けたと思われる紙袋があって、中にはマフラーと店長宛の手紙。

店長は慌てて後を追いかけます。

その甲斐あって、暗い表情で雪道を歩くあきらに追い付くことが出来ました。

店長はあきらにもらったマフラーを手に持ったまま全力疾走してきたせいで、息も絶え絶え。

それでも会えてよかったと安堵すると、あきらは店長が持つマフラーを首に巻いてあげて、少し早い店長の誕生日をお祝いします。

予想外の言葉に店長は顔を赤らめますが、次の瞬間にはこんな日(大雪)に来なくてもと人の好意を踏みにじるような発言をします。

結局、二人は店長のアパートに戻ります。

入口にあきらを待たせ、店長は散らかった部屋を片付けようとしますが、すぐに断念して喚起だけし、あきらを中に招き入れます。

おじゃまします、と上がるあきらに、店長はなぜかこれきりあきらに会えないような予感を覚えます。

しかし、そんなこと口にするはずもなく、インスタントコーヒーで良いか?とあきらにたずねると、あきらもはい、と答えました。

第75話

あきらを雪女に見立てた妄想。

彼女は雪の日に現れ、美しい反物を村人(店長)に渡し、代わりのものを要求します。

村人がこんな大そうなものは持っていませんと言うと、雪女は代わりに村人の魂を奪うのでした。

ここまでが妄想。

店長はやかんを置いてガスコンロに火をつけ、雪女の話を思い出そうとしていると、居間からあきらがくしゃみするのが聞こえます。

居間に戻ってあきらにストーブの近くをすすめると、あきらはこたつに入ったまま電気ストーブを見つめ、それから書きかけの原稿用紙を発見します。

店長はコーヒーを持って戻ってくると、少し恥ずかしそうに顔を背けながらコーヒーを渡します。

すると、あきらは小説書いているんですか?とストレートに質問し、店長は思わず口に含んだコーヒーを噴き出してしまいます。

むせながら原稿用紙を出しっぱなしにしていたことを思い出し、一度咳払いをすると、最近また書き始めたことを告白します。

さらに聞くと、このところずっと書いていることを知り、店長が最近楽しそうに見えたのは小説を書いていたからだと気が付くあきら。少し寂しそうです。

それに気が付かず、店長は正月の間、ずっと書いていようと決めていたのだと、せっかく来たあきらに気を遣わせます。

すみません、そんな時にとあきらが謝ると、一息ついたところだから大丈夫と店長は慌ててフォローします。

そのまま雑談していると、あきらはあることに気が付いて部屋の中を見渡します。

そう、店長の部屋にはテレビが置いてないのです。

ない、と平然と答える店長に、あるのが当たり前だったあきらは驚きます。

数年前まではありましたが、苦手で捨ててしまったようです。

店長はラジオが好きでいつも聞いていますが、昨日ガーデンに置いてきてしまったとのこと。

だからこんな静かな雪の日には、世界に自分しかいないような気分になるのだと言います。

世界に自分だけ、と呟くあきらに、そう、僕らだけ、と店長は答えます。

二人は目をつむり、同じこたつに入って二人だけの世界を楽しむのでした。

しばらくして、どうして雪の日はこんなに静かなんだろうとあきらが疑問を口にすると、雪が音を吸収してくれるからだと店長が教えてくれます。

雪の結晶は複雑な形をしていて、音が当たっても跳ね返らずに吸収してしまうのです。

知らなかったと感心するあきらに気を良くする店長ですが、不意にあきらがコーヒーに口をつけていないことに気が付き、ブラックが飲めないことを思い出します。

すると、店長は雪の日特別バージョンだといって窓を開けると、降ってきた雪を捕まえるような動作をします。

あきらは不思議そうにその様子を見ていると、店長は雪を捕まえたこぶしをあきらの目の前でほどきます。

すると、そこにはいつの間にか角砂糖が握られていて、あきらは大喜び。

ありがとうございます!とお礼を言い、店長もうんと答えますが、嬉しそうなあきらを見て考え事をします。

こんな雪の日だからだろうか、店長は普段言わないような言葉を言いそうになって、それを我慢しているのでした。

第76話

店長の妄想。

店長とあきらは同じ高校に通うクラスメイトという設定。

読書中の若かりし店長に近藤、とあきらが呼びかけ、険しい目つきで写真を手渡します。

どうやら店長に依頼された、何かの大会で走るあきらの写真のようです。

バッチリ!と少し写真に見とれる店長ですが、あきらは用は済んだと言わんばかりにすぐにいなくなってしまいます。

放課後、店長は図書室で学生新聞の原稿を書いています。

ホイッスルの音が校庭から聞こえ、窓際から外をのぞくと、タイム測ろうと提案するはるか、そしてクラウチングスタートから走り出すあきらの姿がありました。

しかし、それは店長の手が届かない世界でした。

翌日の登校時間。

一人あくびをする店長のすぐ後ろを、あきらとはるかが仲良く登校しています。

店長はそんな二人の様子を眺めながら、でも声を掛けることはありません。

現代文の授業では、先生からテストが返却され、店長は97点をとって先生から褒められます。

店長が席に戻る時、あきらも呼ばれ、二人は避けるようにすれ違い、あきらも答案を受け取ります。

先生からは赤点をとった生徒はレポート提出だと言われ、教室からブーイングが飛びます。

そして、あきらもまた難しい表情をしていました。

放課後、雨が降りしきる中、店長は学生新聞の原稿を書きながら、この間もらったあきらの写真を眺めていると、近藤?と声を掛けられます。

見上げると、そこにはあきらがいました。

あきらは店長の向かいに座り、原稿を読みます。

店長は緊張しながらその様子を見守りますが、あきらは感想も言わずに原稿を返してくるので、がっかりしてしまいます。

しかし、そんな店長には気が付かず、あきらは図書館って静かなんだねと言います。

それに対して、店長は雨の日だから人が多いほうだと言いますが、あきらは店長の話など聞いておらず、雨、早くやまないかな、と物憂げです。

それに店長もそうだね、と話を合わせますが、内心そうは思っていません。

だって、雨がやんでしまったら、あきらが目の前からいなくなってしまうのですから。

と、そこで加湿器の蒸気が止まり、店長の意識は現実に戻ってきます。

水を足そうとやかんに水を入れている間、もしあきらと同級生だとしても、会話すらままならない関係だったかもしれない。

そう考えると、今の関係は。

そこであきらに呼びかけられ、トイレを貸してほしいということで場所を教えてあげて、店長はあきらが脱いだコートをハンガーにかけます。

腕を組みながら自分とあきらのコートが並んでいるところを眺める店長。

そして、あきらにもらった手紙を手に取り、人生とはよくわからないものだと思うのでした。

第77話

トイレから戻ると、店長が手紙を持っていることに気が付くあきら。

今、読むんですかとさすがに恥ずかしそうです。

それに対し店長は、あきらが帰ったら読むと紙袋に手紙をしまい、ハムスターのつぶにおやつをあげる時間だと思い出します。

つぶのいる部屋を開けると、より一層散らかっています。

おやつをあげ終えると、再び話題は店長の小説の話に。

店長は中学二年から小説を書き始め、高校の時は新聞部員で記事を書いていたといいます。

今度はあきらが妄想する番です。

先ほどと同様、二人は同級生です。

窓際の席でイヤホンで音楽を聴くあきらに、橘と声を掛ける店長。

あきらがイヤホンを外すと、店長は学年新聞で橘の陸上大会の記事が書きたいからインタビューがしたいとお願いしてきます。

それをあきらは了承し、時間のある放課後、大会の写真を一枚持って図書室に来てほしいと言われます。

早速、あきらは陸上部の練習中にはるかに大会の写真のことをお願いし、明日持ってきてもらうことになります。

と、そこで図書室の窓に店長の姿が見え、あきらはつい見つめてしまいます。

すると、あきら右―!という声が聞こえ、右を向くとすさまじいスピードでサッカーボールが飛んできて、なんとか間一髪よけます。

サッカー部の領域に入ってしまったことをはるかに注意されるあきらですが、その表情はどこか不満げです。

翌日、登校時にあきらは写真のことをはるかに聞きますが、はるかは忘れていました。

明日でも大丈夫?の言葉に大丈夫と答え、一日が始まります。

教室、あきらの見つめる先には談笑する店長と若かりしちひろがいます。

さらに翌日、はるかが約束通り、あきらの写った写真を持ってきてくれます。

あきらはそれを受け取ると、部活を抜けるか休むとはるかに伝えようとしますが、遮るように先生が早く部活に来るように言っていたと伝え、あきらは言葉を飲み込んでしまいます。

さらに翌日、はるかに再度話を切り出そうとしますが、今度は後輩の一年のフォームを見て欲しいと言われ、それも引き受けてしまいます。

あきらが顔を上げると、学食で昼食をとる店長と偶然目が合いますが、店長はすぐに食べているうどんか何かに顔を戻してしまいます。

さらに翌日、またしても一年にお願いされ、店長に会いに行けません。
さらにその翌日、今日はなんとしてもと意気込むあきらですが、またしても一年が登場し、

今日もダメかと諦めかけます。

と、そこで雨が降り出し、練習は中止になります。

慌てて図書室に向かうと、そこには店長がいました。

来れなかったことを謝罪すると、店長はもう来ないかと思ったと淡々としています。

なんか学食でも睨まれたし、と。

それに対し睨んでないと否定するあきら。

店長は図書室では静かにとなだめ、思わず笑ってしまいます。

あきらは笑われた理由が分からずにいると、橘は図書室が似合わないと店長は本当におかしそうです。

心外だと言わんばかりの表情を見せますが、とりあえずあきらも店長の向かいに座ります。

黙々と執筆を続ける店長に対し、あきらは言います。

晴れてる方が嬉しいけど、雨の日もたまには悪くないと思う、と。

そこであきらの妄想は終了。

店長に対し、学生時代、運動部と接点とかありました?と突然話を振り、店長を驚かせるのでした。

第78話

コーヒーを二人で飲んでいたところ、あきらのお腹がぐぅぅと鳴ります。

恥ずかしそうに俯くあきらですが、店長は何かないかとキッチンを漁ります。

すると、見つけたのは袋麺のようなインスタント焼きそばでした。

店長は焼きそばの上に目玉焼きを乗せ、あきらに振る舞います。

半熟の黄身にそばを絡ませて食べるとおいしいと言う店長の言葉に従い、あきらは一口食べます。

よく味わっておいしいと口にすると、店長はとても嬉しそうです。

食事が終わると、店長は改めてもらったマフラーのお礼を言います。

さらに手編みだと聞かされ、驚愕。思わずまじまじとマフラーを見てしまいます。

手作りのマフラーは重たいかと落ち込むあきらですが、むしろ感動したとフォローする店長。

しかし、あきらは自分が作ったものとそっくりなマフラーが部屋にあることに気が付き、警戒する猫のようにそれを指ではたきます。

その仕草に店長も思わず笑い、ありがとう、使わせていただきますと改めて言い、あきらも一安心します。

それでもなお手編みであることを店長が疑うと、ちゃんとこの手で編みました!とあきらは自分の手のひらを店長に向けます。

店長はそれを見て嬉しそうですが、ふと年末、あきらがその手で加瀬を殴ったことを思い出して口にすると、あきらはどうしても許せなくてああなったと話します。

どうしても許せないことを想像し、なぜか笑い出す店長ですが、あきらは怪訝そうな表情を浮かべます。

本当に許せなかったのだと念を押すと、つまり、橘さんは生きてるなと感想を口にする店長。

意味が分からずたずねるあきら。

あきらにとってそれは当たり前かもしれませんが、店長にとってはそうではありません。

笑っていた店長ですが、真剣な表情のあきらを見て、思いを巡らせます。

許せない気持ち。

手編みのマフラー。

かつては自分もそういう世界で生きていたはずなのに、今はその純度の高さで息すらうまくできなくなる。

店長の視線の先では、あきらが角砂糖の包みを嬉しそうに広げています。

第79話

店長はマフラーを見つめ、実は俺も勇斗のかけっこ指南のお礼に、と言いかけますが、渡すはずのプレゼントを車に積んだままだったことを思い出し、話を濁します。

そして暗くならないうちに帰った方が良い、駅まで送ってくと提案しますが、もちろんあきらは残念そうです。

すると、店長は駅の近くの神社に初詣にでも行く?と誘い、あきらははいっ!と嬉しそうに答えます。

神社は人で賑わい、店長とあきらはお賽銭を投げ入れ、それぞれお願いごとをします。

甘酒を買いに行くという店長に、あきらはおみくじを引きに行きます。
合流すると、あきらの引いたおみくじは大吉でした。

ここでも店長は車からプレゼントを持ってくれば良かったと後悔しますが、荷物になるからと理由をつけて頭の片隅に追いやります。

じゃあ、行こうかと帰ろうとする店長に再びあきらの表情が曇りますが、参列客から電車が止まったという話が聞こえてきて、あきらは嬉しそうです。

それを伝えると、店長の家、戻りましょっ!と今日一番良い笑顔で先に進むあきらですが、店長の目にはあきらがどこかに行ってしまうかのような錯覚が見えました。

気が付くと、店長は無意識のうちにあきらの腕を掴んでいました。

どちらも驚き、なんかはぐれそうでと誤魔化す店長ですが、あきらは腕に残った店長の感触を愛おしそうに確かめます。

店長の家までの帰り道、店長は言い訳をしてプレゼントを渡すのを引き延ばすわけにはいかないと考えていました。

そして、このまま部屋に戻ったら、きっと帰せなくなる、と。

だから店長は言います。

「橘さんはもう、走らないの?」

二人は見つめ合います。

第80話

店長の言葉に、あきらは無視して背を向けると、歩き出してしまいます。

結局答えは聞けず、アパートに戻ると、部屋には戻らずに車で送っていくと運転席に乗り込む店長。

しかし、あきらは頑なに車に乗ろうとはしません。

後部座席には、ラッピングされたあきらへのプレゼント。

外では、あきらが不機嫌な顔で雪を蹴り上げます。

コートのポケットに手を入れると、さっき引いた大吉のおみくじが出てきます。

文章を読むあきら。

先に痺れを切らしたのは店長でした。

車から降りるとあきらのもとに駆け寄り、日が暮れるから車に乗ってと催促します。

それに対し、あきらは嫌ですと明確に拒絶。

さすがに店長も驚き、なんどか宥めようとしますが、あきらは嫌ですとしか言いません。

そして、あたし帰りたくありません!と大声を上げます。

言った後になって、徐々に冷静さを取り戻すあきらですが、店長は言います。

あの部屋に戻っても、これ以上俺が橘さんにできることは何もないよ、と。

自分の気持ちを理解してくれない店長に、思わず傘を握る手に力を込めるあきらですが、それでも店長はやめません。

あの部屋には書きかけの原稿と使い古した万年筆、それ以外に何もないと。

そして、一番言いたかったことを言います。

君にもあるんじゃないのか? 待たせたままの季節の続きが、と。

その瞬間、今まで降っていた雪は雨に変わり、あきらも気が付けば泣き出し、走りたいと本当の気持ちを口にします。

雪が雨に変わった今、発した言葉は吸収されず、もうどこにもいきません。

第81話

辺りはすっかり暗くなり、あきらは店長の運転する車に乗って帰宅する途中でした。

真顔の店長に対し、あきらの表情は暗いです。

信号を待つ間に、店長は聞いたことのある物語の一節を諳んじます。

あきらはすぐに『羅生門』だと気が付きます。

店長は、去年あきらのやっていた『羅生門』のプリントを思い出し、最後の質問の答えを聞きます。

それに対してあきらは、「下人の勇気が今後彼の人生にプラスに働けばいいなぁと思います」と恥ずかしそうに答えます。

すると、店長がげっと驚き、さすがに焦るあきら。

しかし、あきらの回答に驚いたのではなく、すごい渋滞に驚いただけでした。

そして、いい答えだね、と改めて店長は答えます。

あきらが運転席に座る店長に目を向けると、店長は文学を捨てる勇気がなかったんだと自分を評価します。

しかし、フォローするでもなく、あきらは捨てなかった勇気じゃないんですか?と反論します。

それに対して店長は、橘さんのそういうところ、僕は好きだよといつもなら言わないことを平気で言ってのけます。

さすがに照れてそっぽを向くあきら。

今日の店長は変ですと言いますが、店長はそんなことお構いなしに穏やかで、今日のことは一生忘れないと言います。

あきらも、あたしも忘れません!と対抗しますが、橘さんは忘れるよと店長に笑われてしまいます。

あきらはむきになってそれを否定し、そんなやりとりを何回か繰り返したあと、いいんだよと店長は言います。

橘さんは忘れたっていいんだ、と。

あきらはそんな店長を見つめ、今日の店長、やっぱり変ですと呟くのでした。

ようやくあきらの自宅マンションに着くと、店長はようやくあきらにプレゼントを渡します。

それは折り畳み傘でした。

あきらは喜んでそれを受け取り、またガーデンで!と言いますが、店長は笑顔で何かを言います。

あきらがそれを無表情で受け取ると、店長の車は行ってしまいました。

ここからは回想。

ガーデンの控室で手品の練習をしている店長に、久保がいつまで休憩しているのと怒鳴ります。

こんなこと出来てもどうってわけでもないし、と落ち込む店長ですが、フロアに出ると、雨宿りをするあきらを見つけます。

食事が出てないことを気にかける店長ですが、とっくに出し終わって下げたと久保は言います。

店長はそのままでは退屈だろうと、あきらに注文されていないコーヒーをもっていきます。

頼んでいないと言うあきらですが、サービスですと笑顔で答え、あきらが飲むのを待ちます。

しかし、一向に口をつけないあきらに、ようやくブラックが苦手だということに思い当たり、とっさにさっきの手品を思い出します。

店長は何も持っていない右手をあきらの目の前に出すと、一度握ってからまた手を開きます。

すると、そこにはコーヒーミルクが握られていて、店長はドキドキしながらも成功したことに安堵していました。

そして、素直に驚くあきらに、思わず笑みを浮かべてしまうのでした。

ここで回想は終わり、あきらが帰宅すると、母親が慌てて玄関に向かってきます。

メッセも返さないから心配で、はるかの家に電話しようと考えていたようです。

しかし、あきらは雨宿りしてただけで、もう大丈夫と晴れやかに言うのでした

最終話

その後、陸上に復帰し、見事県大会出場を果たしたあきら。

あきらはいつも通り冷静で、逆にサポートするはずのはるかが緊張していました。

それを観客席で見ていた石井は心配になってフィールドに出て、はるかを鼓舞します。

そうこうしている間に女子200mの始まりを告げるアナウンスが響き、あきらははるかを石井に託し、フィールドに向かいます。

向かった先には同じレースに出場する倉田が待っていて、この日が来るのをずっと待っていましたと宣言しますが、あきらは無表情でそれを受け止めます。

選手が位置につき、あきらは目を閉じます。

すると、心の中に過去の自分が現れ、あなたに過去の記録(あたし)は追い越せないと言い放ちます。

しかし、あきらはこわいと弱音を吐いた上で、このままは走らなくなることの方がもっと怖くて、あの人だって同じはずと己を奮い立たせます。

あの人とは、おそらく店長のことだと思います。

観客が見つめる中、レースはスタート。

あきらは飛び出して行きます。

序盤から一位を走るあきらの雄姿を見て、はるかは涙が止まりません。

倉田も必死で追い抜こうとしますが、あきらの耳には心地よい風の音だけが聞こえていました。

終わってみれば女子200mの新記録を樹立し、泣いて飛びついてきたはるかと笑顔で抱き合うのでした。

場面は変わり、ガーデン。

久保が芥川賞の見出しの新聞に驚き、大塚も感心し、店長も照れたように笑います。

しかし、芥川賞をとったのはちひろでした。

喜びも束の間、久保からは新しいバイトは決まらないのかと人出不足を指摘されます。

年末以降、どうやらあきら、ユイだけでなく、加瀬や吉澤も辞めてしまったようです。

募集はかけているんだけどねーとはぐらかすと、店長は窓から少し乗り出してたばこを吸いながら、あきらの手紙を結局読まず、それで良かったのだと自分に言い聞かせます。

部活のシーンに戻り、はるかと石井がグラウンドに行くと、なぜかあきらが傘をさしています。

なぜと疑問に思う二人に対し、ただの傘じゃないと言うあきら。

そこで二人はあ!と同時に気が付き、日傘だと言います。

そこには、店長からもらった折りたたみ傘を広げたユニフォーム姿のあきらが笑顔で立っていました。

そして、店長はメモ帳に、前にあきらに話したつばめの話の続きを書きます。

けれど、彼女は恋をしていた。

青い夏の、雨上がりの空のように。

アウトロダクション

番外編のような話。

あきらは、ユイとはるかをお互いに紹介しています。

前髪が目に入って痛いというはるか。

そろそろ切らないと言うと、あきらとユイは笑い出し、はるかは意味が分からず戸惑います。

どうやら少しはユイの腕前も上達したようです。

場面は変わり、ちひろはあきらの活躍が載った雑誌を読んでいました。

お前、挫折経験ある?と聞いた先には、スイがいます。

スイはないかもしれないと答えると、ちひろもないと偉そうに答えます。

しかし、スイはこれからつまずいたらと不安を覗かせますが、ちひろはその答えを知っていました。

つまずいたら、立ち上がればいいのだと。

おわりに

店長とあきらは結ばれなかったものの、それ以上の何かをお互いに残したのだと思います。

そして、特にあきらはまだ若いので、これからの選択肢はそれこそ無限にあります。

陸上に没頭し、また何かのタイミングで店長への思いを再燃させるかもしれません。

そうしたら、その時にまた二人で考えれば良いのでしょうか。

雨上がりの青空のような、素敵な読了感でした。

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