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映画『楽園』の原作小説『犯罪小説集』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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田園に続く一本道が分かれるY字路で、1人の少女が消息を絶った。犯人は不明のまま10年の時が過ぎ、少女の祖父の五郎や直前まで一緒にいた紡は罪悪感を抱えたままだった。だが、当初から疑われていた無職の男・豪士の存在が関係者たちを徐々に狂わせていく…。(「青田Y字路」)痴情、ギャンブル、過疎の閉鎖空間、豪奢な生活…幸せな生活を願う人々が陥穽にはまった瞬間の叫びとは?人間の真実を炙り出す小説集。

「BOOK」データベースより

本書はこれまでに映画化されて大ヒットを記録した『悪人』、『怒り』の原作者であるベストセラー作家・吉田修一さんの作品です。

また本書を原作とした『楽園』という映画も話題になりました。

本書は五つの短編からなる小説で、映画はそのうちの『青田Y字路』、『万屋善次郎』を組み合わせ、脚色した内容となっています。

綾野さんは『怒り』にも出演しているため、吉田さんの作品との相性は間違いないと思います。

そして、この記事で扱う本書についてですが、吉田さんがここまで登場人物の感情に呑み込まれそうになったのは初めてだと言うほど、強い感情が描かれています。

喜怒哀楽、どれをとっても鮮烈で、短編なのであっという間に読まされてしまいました。

さらに実際に起きた事件をベースにしているのも注目すべきポイントだと思います。

起きた事件そのものを描いているわけではありませんが、分かる人には分かる内容になっているので、もし事件を知らない人は読了後、事件を調べてから読み直すと新たな発見があるかもしれません。

以下は本書に関する吉田さんへのインタビューです。

吉田修一『犯罪小説集』〈刊行記念インタビュー〉人間が犯罪者に興味を持つのは、自分と切り離せないところがあるからじゃないですか | インタビュー | Book Bang -ブックバン-

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。
ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

青田Y字路(あおたのわいじろ)

モデルは北関東連続幼女誘拐殺人事件です。

二十年近く前、中村洋子は母国を離れ、結婚のために日本を訪れますが、二年と持たずに離婚。

それを機に当時七歳だった息子・豪士(たけし)を日本に呼びます。

それ以降、町営団地で二人暮らしをしていましたが、今は豪士だけがそこに住み、洋子は菅原という男の元で暮らしていました。

豪士は中学卒業後、高校へは進学せずに地元の介護福祉施設に就職しますが、寮生活に順応できずに三ヶ月でクビになり、二十五歳の今に至るまで洋子に養ってもらっています。

一方、同じ町内に住む小学生・藤木愛華が行方不明になり、町内は騒然とします。

愛華と最後に会ったのは友達の湯川紡(つむぎ)で、二人がいつも別れるY字路で別れ以降、誰も見ていないといいます。

一同が騒ぐには他にも理由がありました。

過去に小学二年生の女の子が同じように下校後、行方が分からなくなり、翌朝、ふらっと戻ってきて、その後引っ越していったということがありました。

詳細は誰も知りませんが、誰かにいたずらされたとも言われています。

紡の父親が娘に聞くと、白、もしくは青の車が現場付近に止まっていたといいます。

数十人の大人たちは総出で愛華の行方を探し、紡の父親はY字路の用水路を捜索します。

そこに豪士が加わり、二人は水門に向かって愛華を捜索しますが、何も見つかりません。

ところがその後、その用水路から彼女のランドセルが見つかりますが、それ以上の手掛かりは見つからず、ついに愛華は見つかりませんでした。

そして十年が経ち、紡は幸せな高校生活を送っていましたが、Y字路を通るたびに誰かに咎められているような錯覚を覚えます。

紡は愛華の失踪当時、彼女の誘いを断り、彼女の作った花冠を受け取りませんでした。

それが原因だったのではと、今でも考えて続けています。

紡の父親は手術のため入院していて、紡はお見舞いに通っていましたが、隣のベッドから聞こえる男女の口論がいつも気になっていました。

隣には菅原が入院していて、洋子がいつもお見舞いに来ていました。

菅原は洋子に入院費をたかり、断られるとおまえの息子は人殺しだと罵ります。

それは愛華が失踪した事件のことを指していて、当時、菅原の言葉で警察が豪士を疑った時期もありました。

ところが彼は事件当時、母親と一緒にいたといいます。

母親だけの証言でアリバイにはなりませんが、豪士が犯人だという証拠も上がらず、菅原の言うことを信じたらいけないと誰もが決めつけるようになりました。

しかし、紡の父親は豪士のことをいまだに疑っていました。

二人で用水路を探した時、それぞれ右と左を見ていましたが、その時には愛華のランドセルは発見できませんでした。

つまり、豪士がわざと紡の父親がランドセルを発見できないようにしていたのではないか。
今となっては、真実は分かりません。

しかし、悲劇はこれだけではありませんでした。

またしても小学生の女の子が失踪し、町内の人は愛華の失踪を思い出します。

誰もが確証もなく疑わしい場所を挙げていきますが、ここで声を上げたのが紡の父親でした。

彼は女の子の失踪を聞きつけて病院を抜け出してきたのです。

紡の父親は愛華の祖父である五郎に従うと宣言し、何人かの人がついてきます。

彼は五郎たちに豪士が怪しいということを伝え、初動が大事だと豪士の住む団地に向かいます。

いつの間にか誰もが豪士が犯人だと決めつけ、ドアを蹴破って部屋に入ります。

中に豪士はいませんが、獣が住んでいるようなひどい悪臭と、押し入れに誰かが閉じ込められていたような奇妙な空間がありました。

その時、外にいた人が豪士を見つけ、逃げる彼を大勢の男が追います。

豪士は油そば店に入ると、店や自分自身に油をかけると、入ってくるなと手に持ったライターで威嚇します。

そこに洋子が駆け付け、息子は何もしていないと擁護。

さらに別の人の証言で、今日、豪士はその人とずっと一緒だったことが分かり、今回の女の子の失踪とは関係ないことが判明します。

しかし、時すでに遅し。

豪士は店に火をつけ、火だるまになった状態で店の外に飛び出してきます。

急いで消火しますが、その時にはすでに亡くなっていました。

その後、女の子は遠くのパーキングエリアで警察に保護され、連れ去った犯人も捕まります。

そして最後に、事件当時の描写があります。

愛華は紡に花冠を受け取ってもらえずに別れると、用水路にかかる橋に白いバンが停まっているのを見つけます。

そこで豪士が泣いていて、愛華は持っていた花冠を彼の頭にのせてあげます。

愛華は一言声をかけ、立ち去りますが、この時、豪士には愛華しか見えていませんでした。

豪士は追いかけようと立ち上がり、花冠が落ちます。

ここで描写は終わっていますが、愛華の失踪に関しては豪士がやったのだと思われます。

曼珠姫午睡(まんじゅひめのごすい)

モデルは首都圏連続不審死事件です。

英里子の住む町では彼岸の時期になると、畦道に真っ赤な曼珠沙華が咲きます。

それに毒があると教えてくれたのは、同級生・石田ゆう子の母親でした。

小学校中学年の頃、英里子とゆう子は同じクラスで多少の交流はありましたが、社交的な英里子に比べてゆう子は地味で、それ以降、しばらく交流はありませんでした。

中学三年の時、たまたま体育の授業のテニスで対戦することになった二人ですが、英里子は負けるはずなのに負けないゆう子を気持ち悪いと思っていました。

それから二人の関係は一切なくなり、三十年以上が経過。

英里子は、ゆう子が殺人の容疑で逮捕されたとニュースで知り、テニスの時の気持ち悪さを思い出します。

英里子は同級生たちと連絡をとり、空白だったゆう子の時間を少しずつ埋めていきます。

ゆう子は高校に入り化粧などを覚えて綺麗になると、手当たり次第男と関係を持つようになります。

あの気持ち悪いゆう子の人生だと見下す一方で、色欲に満ちた彼女の人生を羨ましく思います。

一方、英里子が利用するエステサロンでは、客が望めば卑猥な施術をしてくれるという噂が流れていて、施術を受けた英里子もそれを実感しますが、一度はそれを拒みます。

その後、どうしても気になって英里子はゆう子が暮らしていたM市を訪れます。

ゆう子は『らけっと』というスナックを経営していて、そこでは『英里子』と名乗っていました。

結局、英里子は目的のスナックを見つけることはできませんでしたが、歓楽街にいるうちに中学時代のゆう子から受けた印象が違っていたのではと思い直します。

必死でテニスボールを追いかけていたゆう子。

見物していた男子はゆう子を馬鹿にし、英里子を応援していたものだと思っていました。

しかし実際は、ゆう子が走るたびに体操着がはだけ、男子はそれを見て興奮していたのではないか。

英里子は男に肩を抱かれ、多幸感に包まれるゆう子の写真を思い出し、彼女の味わったものを自分を感じたいとエステサロンに急遽予約を入れます。

施術が始まり、英里子はゆう子について担当のセラピストに話します。

そのうちに頭の中にあるイメージがわき、それは曼珠沙華でした。

英里子はそれを摘もうとしますが、その前にゆう子がそれを摘んでとても幸せそうに笑います。

英里子は今、自分がその顔をしていることに気が付き、ハッと我に返ります。

セラピストは彼女にその気があると判断し、少しずつ敏感な部分に触れようとしますが、寸前のところで英里子はそれを拒否します。

彼女は思い出したのです。曼珠沙華には毒があることに。

戸惑うセラピストに対し、世の中には普通の主婦もいるのだと口にし、英里子はゆう子の後を追いかけることをやめるのでした。

百家楽餓鬼(ばからがき)

モデルは大王製紙事件です。

大手運送会社『永尾運輸』の御曹司である永尾は幼い頃から豪邸に住み、家の防犯カメラを利用して遊んでいました。

成長してもお金持ちの永尾に期待した人間しか周りにはいませんでしたが、小学校時代で一番仲が良かった勇吾と再会し、例えお金持ちでなくなったとしても彼ならずっといてくれると改めて親友になります。

永尾は大学を卒業すると『永尾運輸』に就職し、知識を蓄え、当時、立ち上げたばかりの医療廃棄物焼却事業を見事軌道に乗せ、主軸である運輸以外の本部長として本社に戻ります。
その時、初めてラスベガスに行き、カジノと出会います。

日本でカジノ法案がビジネスチャンスがあることから、その視察でしたが、この時点では特にのめり込むようなことはありませんでした。
その後、由加里と出会って結婚。

彼女がこれまで力を注いできた、アフリカを訪れ、難民を支援するというNGO活動に感銘を受け、自らも参加すると同時に『永尾運輸』として積極的に支援し、企業イメージの上がった永尾運輸はさらに業績を上げていきます。

まさに人生の絶頂期。

ところが、殺人的に忙しい合間に息抜きとしてカジノに再び手を出すと、永尾の人生は急降下していきます。

最初は許容範囲でしたが、カジノでコンシェルジュ的な役割をしてくれるジャンケットの橋口を紹介されると、もはや歯止めが効かないようになります。

どんなに時間がなくてもマカオに行ってはカジノでバカラというゲームに明け暮れ、金がなくなれば子会社である『永尾ファイナンス』から金を借り、それを元にカジノにのめり込みます。

最初はこのままではマズイと永尾も思っていましたが、気が付けばカジノで勝つしか方法がないほど借金が膨らみ、その金額が百十八億円に達したところで警察が動きます。

永尾ファイナンスの社長が情報をリークしていて、永尾が日本に帰国次第、背任罪で逮捕される流れになっていました。

永尾も自分のしていることを分かっていましたが、もう止められません。

さらに親友である勇吾からも金を貸してほしいと頼まれ、永尾が信じられるものは何もなくなっていました。

永尾はマカオを引き上げると、アフリカでNGO活動をしていた由加里と合流します。

この頃には永尾は現実と妄想が入り乱れるようになっていて、心の中では理想を唱えつつも、実際は正気を失っていました。

それを感じ取ったのか、大量のハエが彼にたかり、彼もそれを振り払おうとしません。

そして空腹だったため、赤ん坊をおんぶした女の子から配給されたパンとスープを奪い取ると、それを無心で食べます。

周りを大人が取り囲み、赤ん坊をぐったりとし、女の子は返してと永尾の腕にすがりますが、永尾はスープの入った皿を放そうとしませんでした。

万屋善次郎(よろずやぜんじろう)

モデルは山口連続殺人放火事件です。

善次郎は中学を卒業すると、姉・松美が働いていた都内の工場に就職。

松美が同じ工場で働いていて真野と結婚すると、善次郎は独立した真野の工場に移ります。

その後、取引先の社長から勧められたお見合いで紀子と出会い、一目ぼれをして結婚します。

順調な人生でしたがその十年後、紀子は白血病で亡くなってしまい、善次郎は一人に。

さらに佐久集落に住む老いた父親を介護するため、善次郎は一人で生まれ故郷に戻ります。
父親を看取った後も善次郎は残り、六十歳を超えても集落では若者扱いで雑用を押し付けられますが、それもしっかりとこなしていきます。

彼は生活する手段として養蜂を始めますが、これが軌道に乗ると、村おこしのために自治体に声をかけないかという意見が持ち上がり、集落は活気づきます。

ところが、ここで不運なことが起きます。

善次郎はすぐに許可が下りるとは思っていなかったため、まずは自分が率先して提案するべきだと一人で役所に向かい、村おこしに必要な助成金を申請します。

するとそれがあっさり通ってしまい、結果として集落のまとめ役である伊作への報告が遅れてしまいました。

伊作はもちろん怒りましたが、目的である助成金はおりる目処が立ったため、そこまで目くじらを立てるつもりはありませんでした。

ところが、他の村民の手前、善次郎を許すことは出来ず、二人の関係に亀裂が生じます。

さらに善次郎はレオという大型犬を飼っていましたが、ある日、レオが村民の一人に噛みつき、以来日中の外出を禁じられていました。

この件も合わさり、善次郎は村十分状態となり、家からもほとんど出てこなくなってしまいます。

その頃から家の前に十数体のマネキンを並べ、化粧を施し、服を着せるようになります。

また夜中になると念仏を唱えながら集落を徘徊するようになり、村民誰もが怖がっていました。

そして事件が起きます。

伊作を含めた六人の死体が発見され、報道陣が殺到。

善次郎とレオの姿が見つからず、彼がやったのだと誰もが口にします。

犯人捜索が続く中、レオと被害者の飼っていたチョコという小型犬が見つかり、続いて腹部を自分で刺して重傷を負った善次郎が見つかります。

救急隊員が善次郎を運ぶ中、チョコは何かを抗議するように救急隊員に噛みつきますが、すぐにあしらわれてしまいます。

すると今度はレオが唸りを上げ、恐怖を感じた警官が警棒でレオを殴ります。

一撃をくらったレオは苦しそうに倒れ、善次郎は運び出されます。

その時、一人の記者が、善次郎の体が一回り小さく、重たくなったように感じます。

おそらくそれまではかろうじて生きていましたが、レオが警棒で殴られたと同時に、亡くなってしまったのだと思われます。

善次郎は救急車に運び込まれ、扉が閉まったその時、レオが声を上げます。

それは吠えたのではなく、間違いなく何かを言おうとしているのでした。

白球白蛇伝(はっきゅうはくじゃでん)

モデルは小川博の『元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件』です。

清原和博の事件はこの物語を書き終えた直後のことであり、関係ありません。

早崎弘志というプロ野球選手の人生、そして彼に関係する人たちを描いた物語です。

山之内という記者は彼が高校一年の時に初めてインタビューをし、それから二十六年後、彼の小学六年の息子・大成のリトルリーグの試合を観に来ていました。

物語は一旦、弘志が高校生の頃に遡ります。

彼の住む地域はガラの悪い人が多くいましたが、彼の父親、二人の兄は弘志だけは自分たちと違うと確信し、大事に守ってきました。

そのおかげで弘志は悪事に手を染めることもなく、野球に没頭し、大学卒業後、Xというチームに破格の条件で入団します。

それから四年間を一軍控え投手として過ごし、五年目からはローテーションの仲間入り。

またその年に、北海道のテレビ局に勤めていた美人記者・優里とも結婚します。

私生活が充実したことで成績はさらに上がり、ノーヒットノーラン、オールスター選出、奪三振王のタイトル獲得と目覚ましい活躍を見せます。

ところがその後、故障などを理由に思うように成績が残せず、三十一歳という若さで引退することとなります。

一方、運送会社を経営する弘志の大ファン・田所は北海道で彼と会い、親交を深め、改めてそのスター性に惹かれていきます。

一度だけ弘志の実家に呼ばれたことがあり、その帰り道、二人は白蛇神社に立ち寄ります。

運転代行の業者を待つ間、田所は罰当たりなことをして申し訳ないと思いつつも本殿に背を向け、壁に小便をかけます。

その後、二人は一時疎遠になりますが、ひょんなことから再会します。

田所は自分が順調な人生を歩んでいたため、勝手に弘志もそうだろうと思っていましたが、彼は困窮していました。

金銭的なトラブルで球団のコーチ、不動産会社をクビになり、田所はこれまでの恩も彼を雇います。

ところがここでも弘志は給料を三か月分前借りし、田所も事情を聞かずにはいられませんでした。

すると、弘志が四百万円以上の借金をしていることが判明。

彼は返済に困っていました。

しかも優里はそのことを知らず、優雅な生活を送るために金を惜しまず、弘志も昔の癖が抜けず、後輩などに奢ったりして散財していました。

もはやそこに昔の面影などなく、さすがの田所もこれ以上は無理だと、彼の直談判を無視します。

すると逆上した弘志は田所を金づちで殴り、世間は騒然とします。

幸い、田所は一命を取り留めますが、後遺症で寝たきりになり、しばらくしてから息を引き取ります。

こうして弘志は殺人犯となり、優里や息子の大成は世間からバッシングを受けることになります。

そして冒頭に戻り、大成は母親の実家がある北海道に引っ越す予定で、これが最後の試合となります。

これまで弘志を追いかけてきた山之内もこの試合を観戦し、途中から大成がマウンドに上がると声援を送ります。

大成の好投もあり、チームは大逆転を果たし、試合終了まであと一人というところまできました。

ところがここにきて大成は涙を流し、とても良いピッチングを出来る状態ではありませんでした。

それでも彼は渾身のボールを投げますが、次の瞬間、身をすくませるような金属音が鳴り響くのでした。

描写はここで終わっていますが、おそらく大成は打たれ、最後の試合を勝利で飾ることは出来なかったのだと思われます。

おわりに

犯罪に手を染めた人、寸前のところで踏みとどまった人、それぞれが何かを望み、葛藤する様子が描かれた非常に強烈な作品でした。

どれもおすすめですが、僕は特に『百家楽餓鬼』を推します。

これ以上進んだらいけないと分かりつつも、欲望のままにいけないことに手を染め、しかし心の中では正論や正義を振りかざす。

そんな矛盾している、けれど人間らしい一面がよく描かれた作品だと思います。

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