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辻村深月『ロードムービー』あらすじとネタバレ感想!あの日の感覚が瑞々しくよみがえる短編集

harutoautumn
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運動神経抜群で学校の人気者のトシと気弱で友達の少ないワタル。小学五年生の彼らはある日、家出を決意する。きっかけは新学期。組替えで親しくなった二人がクラスから孤立し始めたことだった。「大丈夫、きっとうまくいく」(「ロードムービー」)。いつか見たあの校舎へ、懐かしさを刺激する表題作他、4編(「街灯」/「道の先」/「トーキョー語り」/「雪の降る道」 )収録。(講談社文庫)

Amazon商品ページより

辻村深月さん初の短編集で、デビュー作である『冷たい校舎の時は止まる』の登場人物が数多く登場します。

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これだけ書くと該当作品ありきに思われてしまいますが、決してそんなことはありません。

作品同士のリンクはあくまでおまけで、物語の本当の魅力は本書の中でちゃんと完結しているので、辻村作品初心者の方にもオススメです。

ここまで遠い日の感情を瑞々しく描き、読者をあの日に連れ戻してくれるのは辻村さんだけです。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前に、本書のタイトルの意味について。

タイトルは短編のうちの一つ『ロードムービー』のタイトルをそのまま持ってきたもので、『ムービー』とあるように映画が関係しています。

主人公が旅を続ける中で変貌し、自分を見つけるという筋立ての映画のことを『ロードムービー』といい、表題作はタイトルぴったりの内容になっているので、ぜひその意味を堪能しながら読んでみてください。

あらすじ

街灯

大学時代の鷹野(冷たい校舎の時は止まるに登場)の話。

ほんの4ページですが、読んでいて不思議と胸に宿る何かがありました。

名前は出てきませんがもう一人登場し、鷹野とくればのあの人です。

これはファン向けといってもいいかもしれません。

ロードムービー

小学五年生のトシとワタルの友情を描いた話。

物語の本筋とは関係ありませんが、トシの両親は『冷たい校舎の時は止まる』に登場する諏訪裕二と桐野景子です。

また鷹野と辻村深月(著者ではなく『冷たい校舎の時は止まる』の登場人物)も登場します。

一見、ファン向けに見える作品ですが、彼らのことを知らなくても全く問題ありません。

トシとワタルがどのように友情を育んでいくのか。

二人はなぜ家出することにしたのか。

二つの時間軸の話が交互に進み、散りばめられた疑問がだんだん解けてくるように構成されています。

小学生の時に感じた無邪気な喜びや子どもゆえの不安などがリアルに描かれ、読んでいるとあの頃に連れ戻されるような没入感がありました。

道の先

塾講師のアルバイトをする大学生と、賢いがゆえに相手の品定めを行う中学生・大宮千晶の話。

主人公はなぜか千晶に気に入られよく話をするようになりますが、やがて彼女が冗談ではなく自分に好意を抱いていることに気が付きます。

先生と生徒との禁断の恋、のような危険な香りのするものではなく、昔の自分を思い出させる生徒に対して昔の自分に言ってあげたい言葉を伝えるという内容です。

これも『冷たい校舎の時は止まる』とリンクしていて、最後にサカキの名前が出たことで主人公の大学生が片瀬充、その電話相手が佐伯梨香であることが判明します。

このことを知ってから読み直すと、充がこんなに成長したんだと違った感動がこみ上げてきました。

トーキョー語り

田舎の中学校が描かれた作品。

地元に不満がある人、ない人。

東京から転校してきた人、東京以外から転校してきた人。

それぞれが自分の思う東京を語り、そのイメージがとても印象的でした。

陰湿ないじめが描かれますが、終盤からのまとめ方はとても爽やかで、後味が悪いことはないのでご安心ください。

ちなみに前の『道の先』と繋がっていて、遠山=大宮千晶です。

両親が離婚したことで苗字が変わっていて、豊島園が待ち受けであること、携帯電話にお守りにしている番号が入っていること、東大に行きたいと思っていることが彼女だと分かるポイントです。

ちょっとだけですが、同年代に見せる千晶の素の表情が見られてとてもレアです。

雪の降る道

辻村ファンは読んですぐに気が付くと思いますが、本書はがっつり『冷たい校舎の時は止まる』とリンクしています。

ヒロ=鷹野、みーちゃん=深月、スガ兄=菅原榊です。

もちろんこのことを知らなくても全く問題はありません。

幼さゆえに感情を思い切りぶつけてしまうところや、それでもそこから何度でもやり直せることがとても印象的な話です。

ほんのりミステリ要素も入っているので、ぜひいなくなってしまった深月の行方を推理してみてください。

感想

あの日の感覚がよみがえる

辻村さんは本書だけに限らず、十代から二十代前半にかけての無謀で無邪気な人物を描くのが本当に上手で、十代の読者の一番の友人のように寄り添ってくれます。

本書でもそれは健在で、幼い頃に持っていた感情を自分がいまだに持っていることに驚き、ちょっと嬉しくなりました。

短編集ということで、普段の長編作品で描くような深さはさすがに求められません。

しかし短編であることで、長編では取り扱えないようささいな、けれど大切な一場面を切り取ることが出来、しかもそれを複数楽しめるという魅力があります。

また文庫版を見れば分かりますが表紙や挿絵にかなり力が入っていて、作品に対する愛情や情熱が強く感じられたのも嬉しかったです。

決してスピンオフ作品ではない

はじめにも書きましたが、本書は『冷たい校舎の時は止まる』ありきのスピンオフ作品ではありません。

本書には作中の彼らだけの物語があり、読んだ人の様々な心に寄り添ってくれます。

誰もが抱える不安や失敗を肯定し、それをプラスなものに生まれ変わらせてくれます。

辻村作品をはじめて読む人にあえて薦めることはしません。

しかし、辻村作品に魅了された時、ぜひ本書のことを思い出してほしいと思います。

おわりに

かつて自分だけが見た綺麗な情景。

自分だけが抱いた大切な気持ち。

それらを忘れてしまった時、薄れかけている時、ぜひ本書を読んでみてください。

その時に見たもの、感じたものが間違ってなかったと肯定してくれるはずです。

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