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『『アリス・ミラー城』殺人事件』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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鏡の向こうに足を踏み入れた途端、チェス盤のような空間に入り込む―『鏡の国のアリス』の世界を思わせる「アリス・ミラー城」。ここに集まった探偵たちが、チェスの駒のように次々と殺されていく。誰が、なぜ、どうやって?全てが信じられなくなる恐怖を超えられるのは…。古典名作に挑むミステリ。

「BOOK」データベースより

叙述トリックで有名な作品です。

以前読んだときは、結末の意味が分からず、今回再チャレンジしました。

すると、その仕掛けかようやく理解できたため、今回こうして記事にしようと思いました。

読んでいて違和感を感じる人もいると思いますが、ぜひその違和感を最後まで疑ってください。

あまりフェアではないという意見もありますが、僕は結末が予想できないほどのアンフェアではないと思ったので、古典的ミステリーの色が強い本作を十分に楽しむことが出来ました。

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますのて、未読の方はご注意下さい。

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犯人(重大なネタバレ)

あらすじに入る前に、犯人をまずははっきりさせたいと思います。

というのも、犯人の存在が本書では巧妙に隠蔽されているからです。

この後に書くあらすじでは、その隠蔽方法に触れながら書いていきますので、犯人を頭に入れながら読むと分かりやすいと思います。

さて、犯人ですが、それは『アリス』です。

この時点で、それは海上が見た幻想ではと思う人もいると思います。

しかし、彼女は実在します。

本書最大のトリックは、密室などの部分ではなく、彼女の隠蔽にあります。

まずはじめに、殺人を暗示するチェス盤が登場し、そこには黒の駒が一個、それから白の駒が十個あります。

窓端は、この城にいる人間と同じ数だと言っています。

つまり、この城には十一人の人間がいることになります。

また、鷲羽は探偵が八人いると明言しているので、三人は探偵ではないということになります。

元々に城にいるのは、ルディと堂戸の二人。

招待されたのは、鷲羽、観月、古加持、无田(ないだ)、入瀬、窓端、海上、山根の八人。

すると、合わせて十人しかいないことになります。

さらに、入瀬は无田の依頼人であり、探偵ではないことが分かります。

つまり、探偵がもう一人招待されていることになり、そのもう一人こそがアリスです。

初日の夕食の席で、一同は自己紹介しますが、その時に実は彼女もいます。

窓端があと一人自己紹介の残っている人物に気が付き、ルディは唐突にアリスについての説明を始めます。

読者は、モチーフとなった『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』のアリスのことだと勝手に判断しますが、実はこれはアリスという名前の人物を指していたのです。

さらにアリスは、自分の名前はイギリスではありふれていると自分の口で言います。

しかし、その後の彼女の描写にブロンドの髪とあるため、読書はルディのことだと判断してしまいます。

しかし、注意して読むと、アリスの台詞にはルディの日本語特有の『そうですネ』などのカタカナが混ざっていないので、気が付いた人もいたかもしれません。

その他にもアリスがいることを示す証拠がいくつもありますので、仕掛けさえ分かってしまえばなんてことはありません。

しかし、作中の視点がころころ変わり、誰もアリスのことを意識していないため、フェアだとは言いにくい面もあります。

動機などはこの後に書きますので、そちらをご参照ください。

あらすじ

集まった八人の探偵

物語の舞台は、東北に浮かぶ江利ヵ島(えりかじま)。

ここはかつて戦争において補給基地としての役目を果たし、その後、白角という人物が買い取り、伐採加工業に利用します。

ところが、冬に機材を搬入したものの、春には事業を放棄。

今では持ち帰れなかった機材が放置されています。

そんな誰もいない島に、複数の探偵が招待されます。

船には探偵の観月、古加持、无田、无田の依頼人の入瀬が乗っていて、先に到着していた鷲羽が迎えます。

一行が向かったのは、『アリス・ミラー城』です。

中には招待したルディ、彼女にお客の世話を任された堂戸、それから同じく招待された探偵である窓端、海上、山根がいます。

鷲羽たちが到着する前、遊戯室で窓端と海上は駒の並べられたチェス盤を見つけます。

チェス盤には黒の駒が一個、白の駒が十個載っていて、窓端は『そして誰もいなくなった』を例に出し、白の駒=城にいる人間の数だと読者は思い込みます。

ところが、前述した通り、城にはアリス含めて十一人いるので、犯人と思われる黒の駒も含んでいるのです。

窓端は何か事件に使われるのではと懸念し、駒をバラバラにし、白のビショップを一つ隠し持ちます。

こうすることで、もし元に戻されていれば、犯人が本気であることを確認することが出来ます。

夕食の時間になると、それぞれ自己紹介を始めますが、ここでしっかりとアリスも紹介され、自分でも発言しています。

また、探偵の滞在期間は一週間で、ここでのルールは一つだけ。

それは、『アリス・ミラーを手に入れられるのは、最後まで生き残った人間のみ』。

解釈はそれぞれに任せるとルディは言いますが、そもそもアリス・ミラーがこの城に存在するのか、それがどんな形をしているのか、それは誰にも分かりません。

一方、探偵たちはそれぞれ依頼人からアリス・ミラーを手に入れるよう依頼されているため、引き下がるわけにはいきません。

夕食後、各々時間を過ごし、夜が明けます。

そして、事件は始まりました。

見立て殺人

翌朝、目を覚ました无田と入瀬。

入瀬は口をきくことが出来ないため、无田と共に行動しています。

二人が朝食を食べに食堂に行くと観月がいて、誰かが死んだことを告げます。

言われた場所に行くと、死んでいたのは鷲羽でした。

しかし、その状況は異様でした。

現場は密室で、しかも部屋の窓と扉の鍵は鷲羽の口の中にあり、その顔は硫酸で溶かされていました。

死体の下には大きな鏡が下敷きになっていて、その側には『DRINKI ME』と書かれた小瓶があります。

まるで『不思議の国のアリス』を見立てた殺人に、一同は考えさせられます。

その後、昨日バラバラにしたはずのチェスの駒は元通りになっていて、唯一窓端の持っていたビショップがありませんでした。

つまり、ビショップが黒のクイーンにとられた(殺された)ことを表しています。

犯人が本気であることを確認した窓端は、今度はチェス盤を駒ごと窓の外に投げ捨てます。

疑心暗鬼

しかし、次に犠牲者となったのは窓端でした。

この殺人をきっかけに海上は疑心暗鬼となり、問答無用で所持品検査を始めようとします。

説得を試みる面々ですが、犯人を目撃した海上はこう証言します。

自分が見たのはアリスだと。

彼女の存在に気が付いていない読者は、幻想かなにかと疑いますが、本当は実在する探偵・アリスのことを指しています。

そして、彼女は窓端を殺害後、鏡の中に逃げ込んだのだといいます。

海上はこの場にいる全員を皆殺しするつもりで、无田は反抗しようとしますが、その前に入瀬の手と手錠で繋がれてしまいます。

その後、恐怖で堂戸が逃げ出し、追いかけようと海上が反応。

それに合わせて一同がうまく逃げ出し、海上から逃れるように散り散りになります。

一緒に逃げたルディと古加持は、海上を無力化する計画を立てます。

古加持は海上に水を掛けると、屋上に誘導し、自分だけは避難梯子を利用して下のテラスに逃げ、屋上に出るドアはルディが鍵をかけます。

これで海上は一人では出られなくなり、冷たい外気で濡れた体は冷えるので、数時間もすれば低体温で動くことが出来なくなります。

その後、ルディは窓端が殺された部屋にはマジック・ミラーの仕掛けられた隠し部屋があることを明かし、犯人がそこに逃げたことが判明します。

依然、犯人は分からず、協力しようと全員に集合をかけますが、恐怖から堂戸は森の方へ逃げ出し、ルディが後を追います。

それからもチェス盤の駒は一つずつなくなっていき、それに合わせて山根、海上の死体が発見されます。

城から人が次々に消えていく中、黒い雪が降り始めます。

束の間の休息をとっていた无田と入瀬が起きると、観月から古加持も殺害されたことが告げられます。

さらに外にも死体があるといい、観月に続いて森の中を歩くと、そこには堂戸、ルディの死体がありました。

結末

そんな状況下においても観月は冷静で、これまでの事件のトリックを見抜きます。

鷲羽殺害の密室について説明する際、彼は一度現場の部屋に入りますが、そこで犯人に殺害され、无田と入瀬は逃げ出します。

もはや生き残っている人物もわずかになり、観月の死を確認するために現場に向かいます。

すると、そこには死んだはずの古加持がいました。

現場には数字の4のような文字が残されていて、観月のダイイング・メッセージだと考えられます。

古加持は死んだふりをしていたと話し、犯人を捜すために協力している風を装いますが、突然、二人を襲撃します。

城に残された人物からして、二人のうちのどちらかが犯人だと古加持は考えていました。

絶対絶命のピンチに立たされる二人ですが、突如古加持の後ろに人影が現れ、斧で古加持の首を半分まで切断して殺害。

そこに立っていたのは、女性でした。

女性は続いて斧で二人を襲撃し、二人は階段から転げ落ちます。

気が付くと、手錠には肩から先のない腕だけが残されていて、入瀬がいません。

そこに犯人が現れ、事件の動機を話し始めます。

この島には、地球全体で起きている酸性化現象が凝縮されていて、その問題を解決するための方法を探していました。

一方、白角もこの事実に気が付き、ほとんどが石灰質の材料で出来たアリス・ミラー城を建てました。

彼は、この島全体の酸性化を、強アルカリ性の石灰で出来たこの城で中和しようとしたのです。

そして、犯人もアリス・ミラーについては何も知らないといいます。

その時、入瀬が入ってきますが、両腕がなくなっていました。

最後に、本当は話すことが出来て、話せないふりをすれば无田の依頼者でい続けられるのではと考えたことを謝まり、死亡します。

残された无田。

犯人は无田と入瀬、その他の死体を細切れにし、酸性化した土地に撒くことで中和することを考えていました。

また警察が現場を調べた場合、細切れにすることで自分の生存の発覚の遅延、もしく死んだと誤認してくれることを狙っていました。

犯人はイギリスにいた頃、人間を中和剤に使うという発想に憑りつかれ、こうして実践しているのだといいます。

さらにルディとはフレンドの間柄だといい、おそらくルディの言っていたフレンドとは犯人=アリスだと思われます。

また、この計画を知っている人は世界に十一人いて、例え失敗したとしても、誰かが引き継ぐだけだといいます。

最後に、无田に斧を振り下ろす犯人。

死ぬ直前、无田は観月の残したダイイング・メッセージが4ではなく『A』だったことにい気が付きます。

それは、犯人の名前の頭文字。

犯人は、アリスです。

おわりに

なぜ誰もアリスが犯人だと考えなかったのか、途中で環境問題などに触れられているとはいえ、その動機がちょっと突拍子もないのではないかとツッコミどころはいくつもありますので、どうしても賛否両論になりがちです。

しかし、そういったことを差し引いても良く練られた作品だと思うので、叙述トリックに興味のある方はぜひ読んでみてください。

また、殺人のトリックなどは結末にほとんど関係なかったため、この記事では割愛されていますがご了承ください。

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