ミステリー

野崎まど『know』あらすじとネタバレ感想!全てを知った先にある未来とは

超情報化対策として、人造の脳葉“電子葉”の移植が義務化された2081年の日本・京都。情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。その“啓示”に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。それは、世界が変わる4日間の始まりだった―

「BOOK」データベースより

SF小説を得意とする野崎まどさんの作品で、本書の目指した先は『全てを知る』ことでした。

全てを知るとはどういうことなのか。

その意味を知り、その結末を知るとどうなるのか。

想像を超えた世界が待っているので、ぜひ期待しながら読んでください。

この記事では、本書のあらすじや個人的な感想を書いています。

核心部のネタバレは避けますが、未読の方はご注意ください。

あらすじ

世界観

情報量が膨大になった世界の話。

『情報材』の開発によって、あらゆる情報があらゆる場所で取得できるようになりました。

しかし、その膨大な情報量を処理するには人間の脳は脆弱であり、そこで『電子葉』と呼ばれるものが人に植えられるようになりました。

電子葉によって人間は膨大な情報量を処理できるようになり、日本では六歳になると全員に電子葉が付与されます。

その結果、知らなくてもその場で調べて即答できるようになり、それは知っていることとほとんど差がなくなりました。

先生との出会い

御野連レルは情報庁で働く官僚で、情報格(クラス)5の権限を持っていました。

クラスは個人の社会貢献度などで通常0~3に分けられますが。それ以上のクラスもあります。

連レルはそれにあたり、一般人では入手できないような情報も入手できる立場にありました。

彼がその立場を目指したのは、恩師の言葉があったからでした。

恩師は道終・常イチといい、京都大学知識情報学研究室の教授でした。

連レルは先生からたくさんのことを学びますが、ある日を境に先生は姿を消し、代わりに自由であること、クラス5を目指すようにと手紙が残されていました。

連レルは先生の言う通りの立場になり、はじめて先生の意図に気が付きます。

科学が求めるもの

連レルのもとに情報通信事業の国内最大手企業・アルコーンのCEO・有主照・問ウが現れ、アルコーンのデータサーバが何者かによって改ざんされたことを伝えます。

それは先生が関係したデータであり、アルコーンは先生を探していました。

手がかりは先生の最後の弟子である連レルにあると考えていましたが、連レルには思い当たる節がありませんでした。

しかし、ちょっとしたことから先生の意図に気が付き、十四年ぶりに先生と再会します。

先生は児童養護施設の経営をしていて、そこで連レルに十四歳の少女を会わせます。

名前は道終・知ル。

彼女は量子コンピュータの電子葉『量子葉』を付けた世界で最高の情報処理能力を持つ人間で、クラス9に該当します。

先生は知ルを連レルに託すと、拳銃で自殺。

連レルは『全知』を求めて知ルと旅することになりました。

何をすれば分からない連レルに対して、知ルは四日後に分かるとだけいいました。

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感想

リアルな世界観

野崎さんは現実にない設定を扱うのがうまく、本書も京都を舞台にしつつも世界観は現実の京都と全く違っています。

僕らの知らない世界が、まるで目の前に広がるように鮮やかに描かれる。

この説得力のある世界観は野崎さんだからこそ出来るもので、この経験が野崎さんの『HELLO WORLD』にも活かされているような気がします。

物語の土台がしっかりしているからこそ、『全てを知った先の世界』という荒唐無稽な話がすんなりと受け入れることが出来ました。

知ることの楽しさ

本書では知るという行為の楽しさ、情報の重要さが描かれています。

情報の一つ一つに意味があり、知っているということには価値がある。

僕はどちらかという知的探求心がある方だと思っていて、本書の『知る』旅はかけがえのない時間となりました。

一つの到達点

野崎さんの作品は、極限を描いたものが多いと感じています。

天才とは何かだったり、この世で一番面白い小説を書く小説家を作る話だったり、完璧な友達の作り方だったり。

本書もその一つで、『知る』という当たり前の行為の極限の先を描いています。

知ることに際限がなくなった時に、人間の暮らしはどのように変わるのか。

当然、僕らの常識は一変し、文字通り、世界が変わります。

SFの話だと分かりつつも、説得力のある物語には確かな力があり、こうなるかもしれないという可能性を感じました。

現実的でない話に、現実であるかのように命を注ぎ込む。

野崎さんの作品は、読んでいて本当に脳が喜びます。

宇宙船の正体

これは核心部のネタバレになってしまうのである程度ぼかします。

最後に『宇宙船』というワードが登場し、これこそが全てを知るためのキーワードになっています。

この宇宙船とは何かと考えた時、答えのヒントがp.304~305にあると僕は推測しました。

この部分を読めば宇宙船が何であるのかは明白で、その宇宙船であれば知ルの手に入れた情報を運ぶことが出来ます。

あくまで推測ですが間違いないと思いますので、読んで結末がうまく飲み込めなかった人は、この辺りを読み直してゆっくり整理してみてください。

おわりに

想像力がかきたてられ、知るという行為に特別な意味を感じられる作品でした。

余韻まで本当に楽しめる作品で、かきたてられた想像力でその後を考えるのはまさに至福の時間です。