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『重力ピエロ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

「BOOK」データベースより

今さら読みました。

伊坂さんの作品は面白いんだけれど、立て続けに読むには飽きてしまい、でも期間が空くと体が欲してしまいます。

本書のテーマは『放火と落書きと遺伝子』です。

謎自体は早い段階で解けてしまいますが、そこからが伊坂さんの真骨頂です。

悩み行動し、最後に救われる。

伊坂さんのタイトルの付け方、その理由が僕は本当に好きです。

また伊坂さんの他作品に登場する人物が何人も出てくるので、ファンなら思わずニヤリとしてしまうでしょう。

以下は映像化された際のキャストの方々へのインタビューです。より作品への思い入れが強くなると思うので、合わせてお楽しみください。

『重力ピエロ』加瀬亮&岡田将生 単独インタビュー|シネマトゥデイ

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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タイトルの意味

内容に入る前にタイトルについて。

主人公である泉水(いずみ)と弟の春、そして両親の四人で、二十年以上前にサーカスに行きました。

そこで空中ブランコを軽々するピエロを見て、両親は楽しそうに生きていれば地球の重力なんてなくなるといいます。

そしてラスト、放火や殺人を犯して自首しようとする春を前に、泉水はその言葉を思い出します。

ピエロは重力を忘れさせるために、メイクをし、空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不格好に転びます。

それと同じように、深刻なことを陽気に伝えることで、泉水は重力のように春にのし掛かる罪を消してほしいと願ったのです。

その願いが通じたのか、自分の体にそのイメージが伝わった時、この作品は本物だと痛感しました。

他作品とのリンク

伊坂作品では、作品同士でリンクしていることが多く、作品を跨いで登場する人物も少なくありません。

本書におけるリンクも先にご紹介します。

伊藤

初出は『オーデュボンの祈り』で、本書では未来を予言するカカシについて泉水に話します。

このカカシとは優午のことで、すぐに気が付いた人も多いのではないでしょうか。

黒澤

初出は『ラッシュライフ』で、泥棒と探偵を生業としています。

本書では探偵として泉水やその父親と接していますが、最後に泥棒に入ったことをカミングアウト。

どこにとは書かれていませんが、葛城の家からお金を盗んだのは彼だと推測されます。

あらすじ

春の生い立ち

いよいよ、ここからはあらすじです。

この物語の主人公・泉水には春という弟がいます。

泉水と春は父親が別で、春は母親が強姦されて生まれた子どもでした。

そのせいか二人の見た目は似ておらず、春は端整な見た目から異性によくモテていました。

ところが春は自分の出自から『性的なもの』を憎んでいて、異性に全く興味を示しません。

絵の才能に溢れ、様々な偉人に影響され、時には躊躇いなく人に暴力をふるうことができる、不安定さを持った青年、それが春です。

放火

物語の発端は、仙台市内で起きた連続放火でした。

春は泉水の勤める会社で、遺伝子に関することを取り扱うジーン・コーポレーションが次に狙われると忠告しますが、はじめ、泉水は信じていませんでした。

ところが、ジーン・コーポレーションの入ったビルがその言葉通り、放火されました。

すぐに消し止められたので大事にはなりませんでしたが、泉水は自分の会社が次に狙われると考えた理由を春に聞きます。

彼が答えた理由。

それは、連続放火の現場近くには、グラフィティアートが必ずあるというものでした。

春は現在、グラフィティアートを消す仕事をしていて、その時に気が付いたのだといいます。

二人は癌に犯されて入院する父親のお見舞いに行くと、そのことを話します。

春は放火現場にあるグラフィティアートは横文字だといい、これまでの文字を繋げると『God can talk Ants goto America 280 century』となります。

しかし、この時点でこの並びに意味を見出すことはできませんでした。

謎の美人

泉水はある日、美人に声を掛けられます。

女性は郷田順子と名乗り、泉水が春の兄であることを知っていました。

彼女は日本文化会館管理団体の人間だといい、春のことを色々調べているのだといいます。

また春の様子がおかしいとしきりに言いますが、彼女が何者かは分かりません。

横文字の法則

父親は次の放火現場には『ago』という文字が残されるはずだと断言し、その通りになります。

さらに春は泉水の会社同様、次の放火現場を予測し、二人は現場一帯を張り込みます。

ところが見ていない建物が狙われ、泉水は現場に急ぎます。

すると、そこに現れたのは順子でした。

泉水は彼女に声を掛けずに春と合流。

犯人は男だと春は言い、順子がこの件にどう関係しているのかは不明です。

遺伝子調査

泉水は探偵の黒澤に依頼し、売春の斡旋を生業とする葛城という男のことを調べていました。

そして彼にDNAを調べることでかかる病気が分かると話を持ち掛け、彼の自宅のマンションを訪れます。

前の夜、マンションに空き巣が入ったのだと話す葛城ですが、泉水は無事に彼のDNAを入手。

検査結果は二週間後に出ると話し、同期で友人の英雄に急ぎの検査を依頼します。

美人の正体

葛城のマンションを出ると声を掛けられた泉水。

そこにはなぜか順子がいました。

泉水は放火の現場で彼女を見たことを伝えると、順子はそれを認めます。

彼女は放火の現場から逃げ出す男を目撃し、後を追ってきたらこのマンションに辿り着いたのだといいます。

顔は分かりませんが、泉水が葛城のところを訪れたのと無関係とは思えません。

この時は泉水の始業時間の関係で話は終わりますが、後日、順子が彼のマンションを訪れ、情報共有をします。

泉水は彼女の所属する団体が存在しないことを明かし、すでに正体に気が付いていました。

順子はかつて春のストーカーをしていて、『春を追いかけるのは夏だ』という理由から『夏子』と泉水と父親は呼んでいました。

顔は整形で変わっていましたが、仕草などから見破ったのです。

夏子は美しい泉水と春の母親に適わないと感じ、海外に留学しました。

それでも春のことが忘れられず、外見が美しくなかったのが敗因だと分析、整形に踏み切ったのだといいます。

しかし、春にはすぐに正体を見破られてしまいました。

それでも夏子は満足していて、春と分かり合うことは諦めますが、彼の身に起きることについては黙っていられませんでした。

最近の春は変だと夏子はいい、春のノートの存在を明かします。

しかし、この時点ではノートの詳細が語られないため、本当の衝撃はこの後です。

落書きの意味

泉水は父親との電話の中で、落書きの意味に気が付きます。

数字を英語に直して頭文字をとると『GCTAGATCA』となります。

これは遺伝子を表し、使われる文字はG、C、T、Aと四種類しかありません。

さらに三つでワンセットになっていたのは、遺伝子の文字も三つずつ読むからです。

大発見に興奮する泉水ですが、父親は急にどうでもいいという風に冷たくなり、違和感を覚えます。

しかし、ここで行き詰ります。

GCT=アラニン、AGA=アルギニン、TCA=セリンというアミノ酸を表すことまでは分かりましたが、それが何を意味するのかは分かりませんでした。

春に話すと意味はないかもしれないと一蹴されますが、泉水はそれぞれを英語に直すとアラニン=A、アルギニン=R、セリン=Sになることを知ります。

春はそこから連想される単語としてARSON=放火を挙げ、今後の手がかりを掴んだような感触を得ます。

しかし、Oで表されるアミノ酸はないため、どこまで信用できるのか分かりません。

その後、泉水は探偵を紹介してほしいと父親に依頼されます。

父親は放火のルールが分かりかけていて、それを確認するための調査を依頼したいのだといいます。

泉水は黒澤を紹介しますが、父親はルールについて教えてくれませんでした。

ノート

深夜、泉水のもとに夏子から電話があり、春の部屋にいるから来てほしいと言われます。

部屋には地図があり、放火場所を印したと思われる丸が書かれていますが、丸は色違いで複数あり、黒丸にいたっては三十個くらいあるといいます。

不法侵入は置いておくとして、泉水もそれには違和感を覚え、急いで春の部屋に向かいます。

泉水は地図を眺め、春が次の放火場所を予測しているのではと推測。

さらに夏子が前に言っていたノートを見ます。

そこには儀式のようにあらゆる偉人からキャラクターの名前がぎっしりと書かれていました。

何を意味するのかは分かりませんが、泉水は大きな不安を覚えます。

真実

泉水は葛城に連絡をとり、検査の結果を伝えたいといって明日のアポイントをとります。

その後、春から電話があり、グラフィティアートが見つかったと報告があります。

二人はもう一度放火現場を張り込むことにします。

今回は『Thank Give Apologize』と落書きが書かれていて、頭文字をとると『TGA』になります。

またDNAは二重螺旋になっていて、ところどころ繋がっていますが、その組み合わせは決まっていて、AとT、GとCの組み合わせしかありません。

これまでの放火現場は落書きの頭文字の対になる文字が頭文字の場所が狙われたため、今回の場合、Tの対であるAではじまる場所が放火されると推理。

それらしい建物はすぐに見つかり、二人はその夜、小学校で待ち合わせて合流します。

泉水は事前にTGA=暗号終了の合図であることを調べていて、この放火が最後であることが予想されます。

見回る中、泉水は春に勧められた水を飲みますが、気が付くと眠っていました。

起きると夏子がいて、二人は春を探します。

夏子は放火犯が春であることを打ち明け、これまで口止めされていたことも明かします。

泉水は落書きの本当の意味にようやく気が付きます。

春は放火に泉水を巻き込みたくて、彼が興味を示すであろう遺伝子のことを暗号にしたのです。

春にとって、泉水はお守りで、彼が側にいるとうまくいく気がすると前から言っていました。

そして、もらった水には睡眠薬が入っていたのだと思い至ります。

二人は春が小学校の校庭にいると確信しますが、霧が出ていて前が見えません。

そんな中、春ともう一人の男の会話が聞こえてきます。

声から相手が葛城だと気が付く泉水。

葛城は自分が春の父親で、母親を強姦した犯人だと認めますが、罪の意識など全くありませんでした。

春は、父親は入院するあの人であり、赤の他人が父親面するなと言って次の瞬間、何かを殴ったような音が響き渡ります。

二人は現場を見ずにその場を後にするのでした。

結末

泉水は黒澤と会い、父親が依頼した内容を知ります。

父親は赤丸を三十か所近くつけた地図を黒澤に渡していて、それは二十八年前、仙台で起きたレイプ事件の現場を示していました。

父親は以前、関心があってレイプ事件について調べたことがあり、気が付いたのだといいます。

そして黒澤に、レイプ事件の現場と放火現場が一致するか確認を依頼していたのです。

そして、それは一致していました。

また泉水が黒澤に依頼したのは『二十八年前、強姦魔として逮捕された男の居場所を調べてほしい』というもので、その男が葛城です。

ここで泉水は、もし春の前に葛城と会っていたら、殺していたと明かします。

彼は葛城から入手したDNAから、彼が春の父親であることに気が付いていました。

しかし、黒澤はそんなことなど気にしていませんでした。

それどころか黒澤の部屋の現金を盗んだのは自分であることを匂わせます。

それから泉水は春と会います。

春は全てを認め、落書きをしたのも、放火をしたのも自分だといいます。

彼はコノハナノサクヤビメに関する日本神話にならい、葛城の本心が火によって証明されると思っていたのです。

春は自分が狂人であることを認め、警察に自首することを考えていましたが、泉水は止めます。

『タイトルの意味』で書いた通りですが、泉水は重力=罪を消してほしいと命がけで願っていました。

ここでその結論は一旦保留となり、二人は父親の病室に向かいます。

ちなみに、遺伝子暗号を辿ると『ARSON』となるのは単なる偶然だと春も驚いています。

手術を明日に控え、父親は怖くないといつも通りでした。

放火が起きなくなったこと、葛城の件が通り魔事件として捜査されていることを知り、父親は二人が隠れて何かをしたと確信していました。

その上で聞き、二人は知らないと嘘をつきます。

すると、泉水も春も嘘をつく時、目をぱちぱちさせるのだと父親は明かします。

そして春に対して、自分に似て嘘が下手だと言い、たったこれだけのことで自分と春が家族であることを証明してみせたのです。

病室を出ると、春のノートの意味が明かされます。

そこに書かれた名前の頭文字はどれも『TTAGGG』と並んでいて、これは細胞の寿命を表すテロメアのことを指します。

本来、細胞分裂するごとにテロメアは短くなり、一定の短さになると分裂が出来なくなり、死に至ります。

そこで春は、このテロメアを延々と書き続けることで、父親が助かるようにと祈っていたのです。

その後、泉水は春を警察には連れて行かず、放火犯を探す老人の元に連れていき、謝罪させます。

こうして、一応の決着がつきます。

最後に、父親は結局、癌が転移しすぎていたため、手術を早々に取りやめ、亡くなってしまいます。

二人は父親の遺体が焼かれて出た煙に向かって乾杯することに。

泉水はわざと缶ビールを振り、屋上にいる春に投げます。

しかし、春はすぐに気が付き、缶を交換してくれよと二階から落ちてきたのでした。

おわりに

衝撃的な冒頭を最後にもう一度持ってくるのにはやられました。

最初は季節の春を思い浮かべ、最後はちゃんと春という人間を思い浮かべていたことにも、この物語を読んだ達成感が湧いてきました。

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