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『倒立する塔の殺人』ネタバレ感想!あらすじから結末まで!

harutoautumn
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今回ご紹介する本は、皆川博子さんの「倒立する塔の殺人」です。

この方、調べてみて本当にびっくりしたのですが、2017年で87歳になられるそうです。

しかも現在もなお執筆活動を続けられ、様々な賞を受賞されているという、もうどう表現して良いのか分からないくらいすごい方なんです。

ジャンルとしては幻想小説、ミステリを得意としていて、今回ご紹介する作品はミステリに該当しています。僕は他に「開かせていただき光栄です」も読んだことがありますが、年齢を感じさせない瑞々しい文章、緻密な文章構成がとても魅力的で、難解な設定もいとも簡単に読ませてしまう点は見事としか言いようがありません。

ということで、まずはあらすじを。

戦時中のミッションスクールでは、少女たちの間で小説の回し書きが流行していた。蔓薔薇模様の囲みの中に『倒立する塔の殺人』とタイトルだけが記されたその美しいノートは、図書館の書架に本に紛れてひっそり置かれていた。ノートを手にした者は続きを書き継ぐ。しかし、一人の少女の死をきっかけに、物語に秘められた恐ろしい企みが明らかになり……物語と現実が絡み合う、万華鏡のように美しいミステリー。

「BOOK」データベースより

戦時中の風景、匂い、感覚が目の前に広がるような文章にまず圧倒されました。物語に引き込まれる、という感覚に陥ったのは久しぶりです。

文章量が多く、幻想的に見せるよう複雑な構成をとっているため読みづらいと思うところもありますが、それをあっさりと読ませてしまう文章力が本書にはあります。

「倒立する塔の殺人」という名前のノートが出てきますが、そこに登場人物たちが自分のことを書き、次の誰かに引き継いでいく。

我々、読者は手記を通じて彼女たちの視線を得て、真実に近づいていきます。

登場人物は皆女性なので、そこで繰り広げられる耽美で、時に冷徹で、時に残酷なやりとりは恐ろしくても見ずにはいられませんでした。

あと、司書の雫石が小枝に対してアンリ・バルビュスの「地獄」を読むのは早いのでは?と忠告しますが、それに対して小枝は「早すぎる本って、ないと思います」と突っぱねるシーンがとても印象的でまさしくその通りだと思いました。

もちろん子供があまり知ることではないことが書かれた本も数多くありますが、では果たして何歳からなら適当なのか?と聞かれると、それは人それぞれなんでしょう。

結局は、面白いと感じられれば良いのです。僕も小学校中学年から江戸川乱歩を読み始め、周りの同級生に比べて背伸びしていた感は否めませんが、それでも夢中になった記憶が今でも鮮明に蘇ってくるので、良い思い出です。

気になる方は、ぜひ本書を手に取ってお楽しみください!

以下、ネタバレです。未読の方はご注意を!!

物語の都合上、手記は順番の通りに出てきませんが、ここでは手記の順番通りに並べてみます。

いきなり核心のネタバレになってしまいますが、詳細はこれから解説していきます。

手記はその人物の視点から見た風景、倒立する塔の殺人が創作部分になります。

手記1:設楽久仁子(本当は雫石郁)

手記2:上月葎子(本名は律子)

手記3、4:三輪小枝

倒立する塔の殺人1、2:設楽久仁子(本当は雫石郁)

倒立する塔の殺人3:上月葎子

倒立する塔の殺人4:設楽久仁子

最初の部分は設楽久仁子が書いたと小枝、葎子は断定していますが、イニシャルが同じだけで、手記の中で久仁子が書いたとはどこにも書かれていません。

しかし、雫石はわざと図書館によく通う生徒を装っていて、手記中に雫石と思われる人物も描写されていますので、勘違いしても仕方がないですね。

後に雫石の名前が「かをる」と読むことが判明したことで、ローマ字占いの結果が手記の内容と合致することで判明します。

これは状況だけでは思いつきもしませんでした。

「倒立する塔の殺人」が書かれた理由ですが、最初は単なる創作のためだとされていましたが、実は書き継いでいくことが目的ではなく、雫石がこれを書いたという事実を七尾杏子に知ってもらうためでした。

二人には過去に繋がりがあり、「倒立する塔の殺人」として書かれた物語も現実に則したものでした。

雫石は名前を書いてしまうと読まれないのでは?と思い、読めば自分が書いたと分かるように書きましたが、ノートは間違って葎子に渡ってしまい、雫石の思惑とは違った結果になってしまいました。

謎に関しては全て物語中で語られているので、これ以上は詳しく書きませんが、設楽久仁子はある意味、可哀そうでしたね。

本人に悪気がなかった分だけ、あの結末は堪えたと思います。

そして、この謎が解けようと解けまいと彼女たちの現実が大きく変わることはなく、そこがまた戦時中の過酷さを物語っていた、なんとも言えない読了感となりました。

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