こんにちは、ハルトです(^^)
この記事を書き始めた10月4日は今年の中秋の名月です。十五夜とも呼ばれていますね。
ただ残念ながら満月になるのが6日ということで、お月見をするならもう少し待った方が楽しめるかもしれません。
さて、今回ご紹介するのは、河野裕さんの「ベイビー、グッドモーニング」です。
先日角川文庫から修正版が発売されたので、遅くなりましたがようやく読むことが出来ました。
河野裕さんといえば、「階段島」シリーズやアニメ、映画が次々と公開されたサクラダリセットが有名ですが、そちらも時間があればいずれ記事にしたいと思います。
まずはあらすじから。
寿命を三日ほど延長させて頂きました──入院中の僕の前に現れた“死神”を名乗る少女。なんでも死神には、リサイクルのため、濁った魂を集めるノルマがあり、その達成のため勝手に寿命を延ばしたというのだが……。綺麗に死にたいと言う嘘つきな少年、物語の中で自殺した小説家、世界を「良い人」で埋め尽くす計画を立てた青年、誇り高き道化師。死が迫った濁った魂たちは、少女と出会い、何を選択したのか。優しくて切ない四つの物語。
【「BOOK」データベースより】
あらすじの通り、死神が出てきます。
これまでの河野さんの作品でも能力や魔女などファンタジーな設定が出てきますが、この作品も同じ路線ですね。
でも、この死神の女の子なんですけど、ユニクロで買ったTシャツとデニムのミニスカートを身にまとうという、死神にしてはめちゃめちゃカジュアルな出で立ち。
しかも死神の役目についても、「そんな感じ」「こういうもの」とあやふやで、いまいち緊張感がない。
僕は死神というと鎌を持った黒いローブをまとったガイコツをイメージしますが、序盤から固定観念を見事に覆されました。
↑こんな感じの。
でも、彼女の性格は河野作品の女の子らしく感情表現に乏しい人形のような感じで、しかしふと見せる心情が相変わらず心地良かったです。
死神という強烈なワードが出てきますが、あくまで彼女は死んだ魂を持ち帰るだけの脇役であり、主役は死を宣告された余命幾ばくかの登場人物たちです。
少年であり。
小説家であり。
青年であり。
道化師であり。
みんな、自分の死期を知り、そこで改めて自分の気持ちに向き合う。
そうして選んだ行動と結果。
決して楽しめるような結果ばかりではありませんが、それでも無駄ではなかったのだと思います。とても美しいと感じました。
河野さんは綺麗なものを描写するのが本当にうまいなと、改めて思いました。
最後まで読み、タイトルの意味を知った時、読んで良かったなと心から思いました。
自分もこれからの生き方を真剣に考え直すいい機会です。
読んでいただければ一目瞭然なので、詳しいネタバレはしませんが、短編の一つである「八月の雨が降らない場所」がおすすめです。
自殺志願者のヒカリと死を宣告されたハラダ。
ハラダは死神にヒカリの自殺を阻止するよう頼まれます。
「明日、この街で、私に朝日をみせてください」
この願いの先にヒカリが見つけた答え。
電車の中で読んでいて久しぶりに泣きそうになってしまいました。
描写が自然と頭に写し出される。
それはまるで映画を見ているような感覚でした。
そんな感動を味わってみたい方はいかがでしょうか?