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『白ゆき姫殺人事件』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。

「BOOK」データベースより

井上真央さん、綾野剛さんなどが出演して映画化された作品です。

事件単体で見たら大したことのない物語ですが、本作の面白いのはその構成にあります。

読者は、赤星雄治という週刊誌の記者が被害者、容疑者の知人にインタビューした供述を聞いて事件の概要を知っていくのですが、実はみんな嘘をついたり、話を平気で盛るんですよね。

なので当然、話す人間によって事件はその様相を一八〇度変えますし、その証言が果たして証拠になるのか疑わしく思えてしまいます。

しかも、本作の面白いポイントには他にもあり、それは記者の赤星になります。

彼は取材をもとに記事を書くのですが、これが嘘にまみれた証言をさらに都合の良い部分だけ切り取ったエンタメ記事なんですよね。

そのおかげで世間の人間が知る事件はもはや原型をとどめておらず、真実を知ることすらできません。

さらに今の時代を象徴するように赤星はSNSでも都合の良い情報だけを流し、それを都合良く解釈した人間がさらに拡散する、という手の付けられない状況になっています。

僕らのもとに届いた情報がいかに加工されているのか、それが分かり恐怖すら覚えるところが本作の面白さだと思っています。

以下は刊行記念インタビューです。

『白ゆき姫殺人事件』湊かなえ|集英社

この記事では、本作の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

事件の概要

しぐれ谷でOLの三木典子(25)が全身を十か所以上刃物で刺され、かつ灯油をかけて火をつけられた遺体が発見されます。

彼女は『白ゆき』という洗顔石けんが大ヒットした『日の出化粧品』という会社に勤めていて、 その美貌と白ゆき姫をかけて、巷ではこの事件は『白ゆき姫殺人事件』とも呼ばれています。

典子の死亡推定時刻は金曜の夜中と推定され、その夜は会社の飲み会があって彼女は一次会で帰っていることから、その後に殺害されたと見て調査が進みます。

そこで容疑者として挙がったのが、典子と同期入社の城野美姫でした。

美姫は大層な名前とは裏腹に、不細工ではないけれど平凡な容姿をしていて、同期の典子とはよく比べられていました。

また美姫は同じ会社の篠山係長との交際が噂されていましたが、その後破局し、篠山を典子にとられてしまいます。

痴情のもつれという分かりやすい動機もあり、世の中は美姫が犯人であると決めて付けていました。

美姫は飲み会を典子と同じく一次会で帰っており、さらに事件後から失踪していて、その信憑性を高めています。

以下、事件のカギとなる証言、状況について。

・会社では二つ上の先輩が新入社員をマンツーマンで指導するのが決まりで、典子のパートナーは狩野里沙子。里沙子は典子に可愛がってもらっていたと証言。

・典子は服などのセンスが良く、里沙子にフランスのセレクトショップを紹介した。

・典子はお酒に弱い。

・典子は芹沢優也・雅也が組む『芹沢ブラザーズ』というバイオリニストの兄弟が好き。

・典子はおいしい豆腐の店を里沙子に紹介した。

・事件当日、典子は飲み会にいつもよりオシャレな服装で来ていた。

・美姫は車を所有している。

・日の出化粧品では社内で少額ではあるが盗難事件が多発していた。

・事件当日の夜、典子が女性の運転する車に乗るところを目撃されている。

・事件の翌日、美姫の車はレッカー移動されていて、中から典子の財布が見つかっている。

以上の情報が最初の証言者、里沙子から提示され、読者はさらに他の人の証言と照らし合わせながら事件を追っていくことになります。

注意しておくべきことは、これらは証言であって事実とは限らないということです。

真犯人は誰か?

結論から言うと、典子を殺害した犯人は里沙子でした。

彼女は典子に良くしてもらったと証言していますが、それは大きな嘘で、里沙子はプライドの高い典子の攻撃の対象となっていました。

そのストレスの解消に里沙子は社内で盗みを働きますが、それを典子に目撃されてしまい、いつバラされるのか不安で仕方ありませんでした。

そんな時、典子と美姫の間でトラブルが発生します。

それは芹沢ブラザーズをめぐったものでした。

元々は美姫が好きだったものですが、彼女に対抗心を燃やした典子は弟の雅也と接触し、交際するにまで至ります。

これは後に雅也の本当の交際相手であるモデルが典子とそっくりだったため、世間の目を欺くために利用されていたのですが、当の本人たちはそれを知りません。

美姫は雅也が汚されてしまったと愕然としますが、典子の攻撃はそれだけではありません。

ある日、芹沢ブラザーズのライブのチケットがとれたが行けなくなったからあげると美姫に持ち掛ける典子ですが、それは嘘で、ライブ前日、やっぱり自分が行くと言って美姫をさらに追い詰めます。

それを聞いた里沙子は、復讐として典子からチケットを奪ってライブに行くよう美姫に勧め、眠くなる風邪薬を美姫に渡します。

事件当日、薬によって寝てしまった典子を乗せると、美姫は駅に近い里沙子のマンションの駐車場に典子を置き去りにし、自分はライブに参加するために電車に飛び乗ったのです。

その後、三次会から帰ってきた里沙子が典子の乗った車に気が付き、今しかないと犯行に及んだのです。

計画的なものではありませんでしたが、こうして悲しい事件は起きてしまいました。

登場人物のついた嘘

本作を読んでいて面白いポイントがもう一つ。

それは、最後に殺人の容疑者と思われていた美姫の手記により、これまでの証言の嘘がどんどん浮き彫りになっていくことです。

しかも誰が嘘をついていたというよりも、ほとんどの人間が嘘をついているんですよね。

そこで、登場人物ごとに証言と実情の食い違いについてまとめたいと思います。

赤星雄治

記者である彼はその職業柄もあり、都合の良い証言だけを切り取り、一つの面白い事件として真実から歪めた形で記事にしてしまいます。

その記事がうけると、さらに調子に乗って憶測をあたかも真実かのように書く腐ったジャーナリストそのもの。

さらに彼は、里沙子と恋仲?のような関係にあり、誰よりも先に事件の情報を得るのですが、決してSNSなどで言いまわらないと釘を刺されています。

しかし、そんな言葉をあっさりと無視し、SNSでも都合の良い情報、憶測を垂れ流すのです。

おまけに自分の味方となる反応にだけ同調し、反論してくる人間の言葉には無視、もしくは叩くというクズの徹底ぶり。

最終的には自分の身元を晒され、総叩きにあうので、因果応報というところでしょうか。

ちなみに彼のSNS上の名前は『RED_STAR』なのでそのままです。

三木典子

美人で性格の良い完璧な人として社内でも有名だった彼女ですが、それはあくまで表の顔であり、実際は自分が一番でないと気が済まないプライドの高い嫌な女でした。

笑顔で他人を蹴落とし、自分が一番になるためであれば何でもします。

それは彼女に近しい人間であれば誰でも知っていて、美姫もそれを知っていて、目を付けられないように大人しくしていました。

しかし、同期で行ったカラオケで、典子が寝ていると思って典子よりも綺麗な人を知っていると話し、それを聞かれてしまったのです。

そこから典子の嫉妬は始まり、美姫から篠山係長、芹沢ブラザーズと大事なものを一つずつ奪っていきます。

最終的には今までいじめていた里沙子に殺害されたので、これもある意味因果応報なのかもしれません。

狩野里沙子

一番最初の証言が彼女のため、読者はそれが真実だと思って、この証言をもとに事件について考えていきますが、犯人なので当然ですが嘘をついています。

パートナーである典子に色々なことをしてもらって本当に良い先輩を持ったと言っていますが、それは全くの嘘で、典子から事あるごとにいじめられて大きなストレスを抱えていたのです。

そのストレスを発散するために社内で盗みを繰り返しますが、それが典子にバレてしまい、会社を首になるのではと怯えていました。

そんな時、美姫がたまたま里沙子のマンションに典子を乗せた車を放置していったため、衝動的に事件を引き起こしてしまったのです。

こう見ると被害者にも見えますが、典子殺害後に平気な顔で事件のことを赤星に教えているあたり、救いようのない人間だったのかもしれません。

また口止めしていたにも関わらず赤星にSNSで呟かれ、『SACO』というハンドルネームで彼を批判しています。

最初から言わなければ良かったのにと、誰もが思ったはず。

満島栄美

里沙子の同期で、美姫のパートナーだった女性。

彼女は嘘をついていたというよりも、噂好きで、話を面白いくらいに持っていたり都合の良いことだけを話したりしています。

そのせいで赤星の中では犯人=美姫という図式が出来上がってしまい、今回のような報道になってしまったのです。

どこにでもいそうなタイプの女性なので、自分の周りにいたら注意が必要かもしれません。

篠山聡史

彼は美姫とは交際しておらず、弁当や料理を作ってもらっていた仲だと言い張っていましたが、実際には交際していたと言って差し支えないような関係を持っていました。

自分が美姫と典子と関係を持っていたことで、事件に関与していると勘違いされたくなかったのかもしれません。

彼のついた嘘で事件が大きく変わったとは思えませんが、小さい男だと印象を受けざるを得ませんでした。

前谷みのり

美姫の大学時代の親友で、週刊太陽に抗議文を送っています。

しかし、その内容は美姫の名誉を守るというよりも彼女が打ち明けてくれた秘密を暴露する自己満足のような内容で、編集者の美姫に対する印象を悪くしたのは確かです。

そのせいで世間に知られたくない秘密も週刊誌に掲載されてしまいます。

親友だと思っていたのに、美姫に彼氏が出来たことが許せなかったというなんとも身勝手な女性でした。

SNSでの名前は『NORI-MI』で、あとから後述する大学時代の親友・真澄から責められる場面もあります。

緑川真澄

みのりと同様、美姫の大学時代の親友だった彼女。

一見、証言もせずに事件には無関係そうに思われますが、SNSの『GREEN_RIVER』という名前で登場します。

美姫の無実を晴らすために事件について情報収集を始めますが、フルネームや個人情報を晒すなど配慮のない行動に、美姫からはかなり憎まれていました。

もしかしたら、親友のために行動している自分に酔っているのかもしれません。

あとでみのりとSNSで言い争いをしていますが、どっちもどっちな醜いやりとりでした。

高校の同級生

高校時代のエピソードによって、美姫には呪いの力があっても、今回もそうに違いないという恰好のエサを週刊誌に渡してしまいます。

結末

無事に里沙子が犯人として捕まり、晴れて無実が証明された美姫。

彼女は生活するために日の出化粧品に戻るつもりですが、戻っても事件の前にあった日常はそこにはありません。

一度世間に伝わった情報は簡単には消えず、誤解を受けたままの人間からはそういう人間として見られてしまうかもしれません。

それでも美姫には憎しみの感情はなく、むしろ殺害された典子には同情を覚え、そしてこれから自分が送るであろう日々に思いを馳せるのでした。

おわりに

この作品を通じて、今自分が見ているニュースで報じられている事件は真実なのか?ということを改めて考えてしまいました。

SNSが普及し、確かに個人で発信できることは格段に増えましたが、それには責任が伴います。

情報を発信する前に、誰かを傷つけないか、自分の身を危険にさらしていないか。

今一度考えなおした方が良いのかもしれません。

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