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『傷だらけのカミーユ』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで!

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『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の最終作。『その女アレックス』に続き、イギリス推理作家協会賞の2015年度インターナショナル・ダガー賞を受賞。 アンヌという女性が二人組の強盗に殴られ瀕死の重傷を負った。警察からカミーユに電話がかかってくる。アンヌの携帯の連絡先のトップにあったのがカミーユの電話番号だったからだ。カミーユは病院に駆けつけ、アンヌとの関係を誰にも明かすことなく、事件を担当することにする。しかし強引なうえに秘密裏の捜査活動は上司たちから批判され、事件の担当を外されるどころか、刑事として失格の烙印さえ押されそうになる。カミーユはいったいどのようにして窮地を脱し、いかに犯罪者たちを追い詰めることができるのか。シリーズ累計100万部突破。2016年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。

Amazon内容紹介より

ヴェルーヴェン警部シリーズ三部作の最終作となる本書。

前の話はこちら。

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ここまで多くの心の傷を負ってきたカミーユが再び人を愛し、大切な人を失う恐怖に再び晒される。

相変わらず先の読めない展開が面白く、最初から最後まで楽しませてもらったシリーズとなりました。

以下は文藝春秋に掲載された書評で、非常に参考になりました。

ルメートル、なんと憎らしい作家だろう 『傷だらけのカミーユ』 (ピエール・ルメートル 著/橘明美 訳) | 書評 – 本の話

この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。

ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。

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あらすじ

一日目

『その女アレックス』から一年。

妻のイレーヌを失った悲しみを背負うカミーユですが、アンヌ・フォレスティエという新しい恋人ができ、少しずつですが前に進み出していました。

ところが、そんな彼に不幸が次々に襲い掛かります。

長年捜査を共にしてきた親友・アルマンが食道癌で亡くなり、カミーユは彼の葬儀を控えていましたが、そこに警察から電話がかかってきます。

アンヌが武装強盗に襲われて病院に搬送されたという知らせで、警察は彼女と最も通話頻度の高いカミーユに電話してきたのです。

病院に駆け付けると、アンヌはトラックに轢かれたかのようなひどい状態でした。

カミーユは真実を知りたいと思い、彼女と交際していることを内緒にした上で、普段は担当しないはずの武装強盗事件を担当します。

これまでの上司であるル・グエンは部長から警視長に昇進し、新しい部長のミシャールからは担当したい理由を聞かれますが、カミーユは事件に通じている可能性のある情報屋を知っていると嘘をついて担当をもぎとります。

部下のルイは何かあると気付きつつも、理由は聞かずに従います。

今回の事件ではモスバーグ500という銃が使用されたことが分かっていて、同じ銃が使われた強盗事件がもう一つありました。

同じ日に立て続けに四ヵ所も襲撃され、死者は一名。

手口が類似していることから同一犯と思われ、三人組のうち、中心人物はヴァンサン・アフネルだとすでに判明していました。

一方、モスバーグを携えた犯人(ここではまだ誰か明かされていない)はアンヌが生きていることを知り、彼女の病室に忍び込もうとしますが、看護師に目撃されて退散します。

その十分後、カミーユは病院にアンヌの弟・ナタンから電話があったことを知ります。

ところが、声から推定される年代から別人だと思われ、カミーユはアンヌを狙う犯人だと判断。

院内を探しますが、それらしき人物は見当たりませんでした。

二日目

翌朝、アンヌの住むアパルトマンに行くと、何者かが侵入した形跡がありました。

カミーユはミシャールにこれまでの捜査報告をし、アンヌの命はまだ狙われていることを伝え、警護を一人つけてもらいます。

しかし、ミシャールはそこまで大事に捉えるカミーユを怪しんでいます。

さらに情報屋の話になり、カミーユはとっさにムールード・ファラヴィの名前を挙げます。

彼は売春斡旋を専門にし、刑務所に放り込まれているので、今回の事件との関係が見えません。

当然、ミシャールは追及しますが、カミーユはなんとか誤魔化して捜査に戻ります。

カミーユは話ができるようになったアンヌから、事件の犯人に繋がる手掛かりを探します。

すると、彼女は犯人のうち一人がセルビア語で話しているのを聞いていました。

そして、病院に電話を掛けてきた人物に訛りはありませんでした。

そこでカミーユはアンヌを狙っているのがアフネルだと判断します。

ここで、アンヌの当日の動きが判明します。

彼女は注文していた高級腕時計を取りにお店を訪れ、そこで事件に出くわしたのです。

腕時計の裏面にはカミーユの名前が書かれていて、ここでルイは、アンヌがカミーユと親しくしていることを知ります。

しかし、カミーユは彼を巻き込まないために本当のことを話しません。

一方、アンヌは犯人の顔を目撃していて、多くの写真の中からアフネルの顔を選びます。

さらにセルビア語を話す男について、彼女はドゥシャン・ラヴィッチという男の顔を選びます。

三人目は分かりませんが、捜査は進みました。

カミーユは、ルイにセルビア人を任せ、自分はアフネルを追います。

アフネルはこれまで数多くの強盗を行い、信頼できる仲間を失ってからは一時表舞台から姿を消していました。

ところが、今年になって復帰すると、一日で四ヵ所も襲撃したのです。

一ヵ所でさえかなり消耗するのに、なぜ四ヵ所も襲撃したのか?

さらに死者を出した、というのもこれまでの彼の手口とは違って見えます。

つまり、彼は急ぎで大金を必要としていることになります。

しかし、カミーユはアフネルをそう簡単に見つけられないと判断し、まずはラヴィッチを探すことにします。

カミーユは判事を騙し、一斉検挙の許可をとり、警察総出でパリ中からラヴィッチを探します。

しかし、見つかったラヴィッチはすでに殺害されていました。

今回の行き過ぎた捜査にカミーユの立場はますます悪くなりますが、もう止まれません。

彼は刑務所でファラヴィと面会します。

といっても、彼に用があるわけではなく、自分がここに来たという事実を残すためでした。

そして、ファラヴィが自分をたれこんだ人物を知りたがっていることをカミーユは知っていて、その名前を教える代わりに手を貸してもらうことで交渉は成立。

ファラヴィの性格からして、そのためであれば人を殺すこともためらいません。

カミーユは彼と交渉したことで、刑務所にいる別の人物にその存在を伝えます。

三日目

犯人の影に怯え、退院したいと行って聞かないアンヌ。

そこでカミーユは病院に内緒で彼女を連れ出し、モンフォールにあるアトリエで匿います。

彼女を安全な場所に隠すと、カミーユは刑務所でビュイッソンと面会します。

彼は五年前、カミーユの妻・イレーヌを殺害した犯人でした。

カミーユは冷静で、逆にビュイッソンは、カミーユがファラヴィと面会したことでいつ殺されるのかと怯えていました。

しかし、カミーユがアフネルのことを知りたがっていることが分かると、アフネルについて知っていることを話します。

どうやらアフネルは重病を患っているようでした。

そして女ができ、死ぬまでに彼女にお金を遺そうと考えていることが分かります。

しかし、カミーユはそれだけでは満足せず、夜までにアフネルの居場所を突き止めるようビュイッソンに引っ掛け、刑務所を後にします。

カミーユはアンヌの勤める会社に連絡を入れ、彼女の状態について話そうとします。

ところが、アンヌ・フォレスティエという人物はその会社に存在しませんでした。

カミーユはデータベースに検索をかけますが、名前、生年月日、出身地からは彼女と同一人物を見つけることはできませんでした。

献策条件を変えても、見つかりません。

アンヌ・フォレスティエという人間はこの世に存在していなかったのです。

その時、カミーユはアンヌから留守電が入っていることに気が付きます。

内容は、例の犯人が彼女を襲撃しているというものでした。

アトリエに急行すると、アンヌは無事で、アフネルは逃げた後でした。

しかし、カミーユはアンヌをアトリエに連れてくる際に、尾行されていない自信がありました。

つまり、犯人は初めからカミーユが、彼女をここに連れてくることを知っていたことになります。

アフネルとは会ったことがないため、彼が襲撃者ではないと分かります。

捜査は振り出しに戻ります。

カミーユはアンヌのカルテを入手すると、法医学研究所に意見を求めます。

結果、犯人に殺意はなかったことがあり、カミーユは、犯人はアンヌではなく自分を狙っていることを確信。

ルイに、かつての部下で、ビュイッソンに情報を流したことで警察を追われたマレヴァルについての情報を集めさせます。

彼は警察を辞めた後、優秀な犯罪者になっていました。

そして、ナタン・モネスティエという人物と繋がります。アンヌの弟です。

ここから、本当の名前はアンヌ・モネスティエだと判明。

ナタンは優秀な科学者でしたが、麻薬所持で逮捕されていました。

マレヴァルから購入したのです。

結果としてナタンはマレヴァルに対して負債を抱え、アンヌが尻拭いをするようになりました。

そしてビュイッソンの調査により、アフネルは現在、エリック・ブルジョアという名前で生活していることが判明。

カミーユは彼の住む一軒家に向かいます。

そこには彼の他に、若い妻と生まれたばかりの赤ん坊が暮らしていました。

観念したアフネルは、真相を話します。

最初の強盗はアフネル、マレヴァル、ラヴィッチで行い、アフネルは二人を裏切って大金を持ち出し、行方をくらましました。

全ては妻と子どものためです。

ここからはカミーユが説明します。

裏切られたマレヴァルはアフネルを必死で探します。

しかし、自分では無理だと判断し、警察に任せることを思い付きます。

そこでアフネルと一緒に起こした事件と同様の手口で強盗に入り、アフネルを探させます。

さらにカミーユとアンヌの出会い、それも仕組まれたものでした。

アンヌが犯人の顔を覚えていたのは、事前にマレヴァルからアフネル、ラヴィッチの写真を見せられていたからです。

彼女に傷を追わせ、執拗に追ってきたのはマレヴァルでした。

カミーユは最後の仕事に取り掛かります。

アンヌにアフネルを捕まえたこと、彼の居場所を伝え、マレヴァルに情報を流させます。

マレヴァルは喜んで向かいますが、アフネルがモスバーグを構えて待っていました。

足を撃たれますが、持っていた銃でアフネルを射殺。

しかし次の瞬間、カミーユによって、うなじに銃を押し付けられていました。

はめられたと悟るマレヴァル。

アフネルの妻と子どもは、カミーユによって大金と共にすでに逃がされていました。

そこに何台ものパトカーが到着し、ルイもマレヴァルと再会。

しかし、再会を懐かしむ間もなく、マレヴァルは逮捕されるのでした。

結末

カミーユが家に戻ると、明かりがついていました。

アンヌがいるのか?

これ以上失望したくないと思いながら中に入りますが、そこにアンヌはいませんでした。

不意に母親が恋しくなりますが、涙をこらえるカミーユ。

これまで集めた写真、報告書、新聞記事の切り抜き。

そこにはイレーヌの最後の写真もありますが、構えてはそれらをつかむと、薪ストーブに投げ入れて燃やしてしまうのでした。

おわりに

死別とは違いますが、またしても愛する人を失ったカミーユ。

今回の件で、責任をとって警察を追われてしまうかもしれません。

タイトル通り、カミーユはもはや傷だらけです。

これで最後というのはなんとも後味が悪いものがあります。

これだけ魅力的な登場人物で溢れる作品なので、何かしらの形で物語がまだ続くことを切に願っています。

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